DMC

□扉
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「…ぁ……く」
「苦しいか?」

そんなことは誰も言っていない。それなのにお前はいつも確認したがる。こんな声を出しているのが自分だというのが、俺は嫌なだけだ。

「言っちまえ、どうせ言うことになるんだぜ?」

いまだに、一度もそんなことを言った覚えはなくて。

「声出せ。気分が出ねえ。」
煉瓦の壁に背をきつく揺すり上げられ、出たのは悲鳴とも鳴咽ともつかぬ無様なもの。

「…よし。」

自分の両腕手首が、痣になるほど握りしめられている向こうに、ガラスの欠片のような青が見える。普段はからかい気味な青が、今はぎらぎらと雄の力で睨みつけている。
 強く押し込まれるものが、別の思い出を呼び起こしていることなど、知らないだろうな、お前は。

「忘れるな。」
返事をしないでいたら、手首が嫌な音を立た。
「あ…あ、もっと締めろ」
お前を喜ばせたくて締めているわけじゃない。

 久しぶりに天気がよかった。お前がいない時は、いつも魔力で封じられる玄関をほんの少し開けて、埃を掃くついでに太陽に見とれた。二階でなら窓越しに太陽を見られたんだな。気がつくのが遅かった。

「忘れるな。」
「しつこい。」

逃げようとしたわけではなかったから、不満だったのが言葉に出た。黙っていた方が、よほど早く済んだのにな。

今日は、後で悔やむことばかりだ。



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