06/17の日記
01:32
庭球/丸井
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「・・・え。」
かったるい授業を抜けてきてみた屋上には、女子生徒が一人いた。
フェンスの先に、座っていた。
前にかがめば真っ逆さまにさようならできる所に。
「ちょ、お前何してんだ!」
「・・・?」
頭の中に「自殺」の文字が浮かんだ俺は出せる限りのスピードで駆け寄った。
女子生徒はイヤホンをつけていたみたいで、俺の叫び声には気づいたものの、何を言ったかは伝わってないみたいだった。
「そんなとこいたら危ねぇだろぃ!!」
俺が真剣に言ってることが伝わったのか、きょとんと俺を見ていたそいつはのそのそと動きだし、フェンスを越えて俺がいるほうに無事、足をつけた。
スカートがめくれそうになってどきまぎしてしまったのは内緒だ。
「どうしたの、丸井くん。」
「柏野・・・?」
そいつは同じクラスで俺の後ろの席の柏野だった。
会話は席替えしたときの挨拶程度。
特に話す間柄ではなく、席が前後になるまで接点がなかったクラスメートだ。
柏野はなぜ俺があんな必死になってたのかが分かってないらしい。
不思議そうに俺をみている。
「どうしたのって、お前・・・」
死のうとしてたんじゃ・・・
最後まで言わず言葉を飲み込んだ。
そういや、自殺しようとしたんならこんなあっさり戻ってくるもんか?
「もしかして、死のうとしてるように見えた?」
「っ!!」
俺が言わんとしたことが伝わったらしい。
沈黙は肯定の意。
言葉に詰まって黙った俺に柏野は苦笑いをした。
「一応、そういうつもりではなかったんだ。
ごめんね、驚かせちゃって。」
「いや、俺の勝手に勘違いしたし。
怒鳴ってごめん。」
柏野のいった一応、が気になったが、苦笑いをしながら謝ったのをみるとさっきまで死のうとしてたとは思えなかったから、忘れることにした。
「柏野も授業サボったりすんだな。
俺、真面目なやつだと思ってた。」
「え・・・?」
「いや、お前結構本とか読んでるだろ?
だからそう思ったのかな。」
せっかくだから授業が終わるまでのんびりしてようってことで俺たちはフェンスに寄りかかるように座った。
俺から一人分あいたところに柏野が座る。
これをテニス部のやつらがみたらびっくりするだろうなぁ。
俺、女嫌いだし。
そんなどうでもいいことを考えてたら、柏野が黙ってるのに気づいて、柏野のほうを見た。
柏野は驚いた顔をして俺のほうを見ていた。
俺。変なこといったか?
「どうした?」
「え・・・丸井くん、私のこと、覚えてるの?」
意味が分からない。
自分の横で会話しているやつのこと、忘れることなんてあんのかよぃ?
「覚えてるってか・・・席前後なのに忘れるわけないだろぃ。」
当たり前のことをいったつもりなのに、柏野はまた驚いた顔をした。
何をそんなに驚いてんだ、こいつ?
「丸井くん、ありがとう!」
「!!」
なぜかお礼をいった柏野は、笑顔だった。
笑うと可愛いんだな、こいつ。
***
他人に印象とか関心とかがもたれない、透明オーラの少女の話。
他の人は名前は覚えていても、主人公がどこにいたって気にならないし、「あぁ、あの子ね。」って感じ。
どんな子か聞いても、「さぁ・・・分からない」と誰に聞いても答えはこれ。
影が薄いっていうより、存在が薄い、そんな体質に嫌気がさして人間関係築くのをあきらめてる。
丸井は自分に言い寄ってこない女子が珍しくて主人公のことを覚えていた。
そんな主人公に丸井がだんだん引かれていって仲良くなる話。
本当にネタだな。
なにが書きたかったんだ、自分。
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