夢の奏で

□6.友情or恋
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私、可笑しいのかな。
哀しい筈なのに・・・笑ってた。

あの時も、今も・・・・・・。






*** 







棗side



「・・・・・・。」


病院独特の機械音しか聞こえない部屋。
集中治療室という名前がつけられた部屋に、一人の少女と、その前に座っている自分。


少女のほうは数え切れないほどたくさんの管とつながっている。




―こいつは俺を庇って・・・。



少女の手を握ってみるが、なにも反応がない。


予想以上に小さな手。
ありえないくらい白い肌。
今は青白くみえる。

表情は、無表情で・・・。
何を感じて、考えるのかまったく読み取れない。




「はぁ・・・・・・。」


俺は、自分が思っている以上にショックを受けているのかが分かった。

自分とどこか似ている、少女を守れなかったことに。
けがをさせたことに。

数日前まではあんなに警戒していた奴なのに、こんな感情芽生えるなんて・・・。



「日向。」

「・・・・・・。」

「お前も休めよ、元々体調悪かったんだから。」



部屋に、ひなたの担当医が入ってきた。


若くて、到底医師には見えない人。

そのせいか、本音が言いやすそうだった。



「俺のことはどうでもいい・・・。」

「そんなこといったら、こいつ怒るぞ?」

「十分休んだ。」

「数時間寝てただけじゃねーか。」



この人はひなたのことをよく知っているらしい。

それに、ひなたの担当医ということは、前から病院に通ってたことになる。


コイツにはなにかがある、

改めて確信した。



「・・・ま、いいや。
眠くなったらこっちのベッド使えよ。」


そういって担当医は出て行った。

大人にしてはいい奴だと思う。


この部屋に通してくれたのもあの人だし・・・。



俺は再度少女の手を握り締め、目が覚めるのを祈った。








棗side終












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