夢の奏で

□5.会いたくない奴
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「まったく・・・何をやらかしたらこんな急に悪化するのかな?」

『いやー、今日は元々風邪気味なんですよ。
うまく重なってるだけなんで、カルテには異常ナシと記入してください。』

「そんなこと・・・。」

『書いてください。ね?』

「わ、分かった。」


に っ こ り。
只今、私は担当医を脅しております。
もちろん、背後に黒いモノを漂わせながら。



「自分の体、ちゃんと大切にしろよ?」

『はーい。』



けだるい返事を医師(せんせい)に返した。
今日は2週間に一度の診察日。別に風邪を引いているわけでもなく・・・。

え?さっきの「風邪気味」という証言?
嘘ですよー。

<石化のアリス>は4番目の“能力のかたち”なのだ。

4番目は、<アリスの底がない代わりに、アリスを使うたびにその人間の寿命を縮めてしまう>タイプ。
なんらかの症状が少しずつでてくるはず・・・。



「そういえば、ひなた。
記憶のほうは大丈夫か?」



担当医は思い出したように聞いてきた。
名前は、なんだっけ・・・
長谷川・・・そう、長谷川医師。かなり若い医師だと思う。



『いまんとこなにも・・・。
多分。』

「多分かよ?!」



記憶とは、思い出や過去のことで、私の記憶は所々、穴が空いたようになくなっているところがある。

医師が私の記憶に気にかけるのは、またしても能力のかたちのせい。

<言霊のアリス>の能力のかたちは、私だけのかたち・・・。
<アリスを使いすぎると、記憶を喰われる>
タイプ。

<言霊のアリス>を使うには、記憶を代償にしなければいけない、といってもおかしくない。

喰われる=消える、と一緒で過去の記憶から、私が幸せだったときの記憶だけ消えてしまう。
まぁ、きっかけさえあれば消えた記憶は戻ってくるのだけど。



「なんかあったら俺に相談しろよ?」

『なんかあったら、しますね。』



私は悪戯な笑みを浮かべ、手を振りながら診察室をでた。


私の能力のかたちを知っているのは、長谷川医師と、藤崎さんという付き添いの看護師一人。
今日は他のところにいるみたい。

あとは黒ずくめさん(ペルソナ)とか、
偉そうな少年(初等部校長)とか・・・。

結構シークレットなことだ。


今の時刻は10時近く。
もう学校はとっくに始まっている。

・・・あのクラスのことだから、授業をやっているとは限らないが。



とりあえず、病院の出入り口に向かった。








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