夢の奏で

□2.初任務
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「蛍おはよー!」

「朝からうるさいわね。」



バカン!!


教室で鳴り響いている音の元は今井さんの発明品で。



「あ、おはよー朝丘さん!」

『おはよ。』



それに撃たれてもなんともなさそうな佐倉さんは普通に挨拶してくる。
これはいつも通りの光景らしい。
誰も気にしてる人がいない。



「なぁ、ひなたって呼んでもええ?」

『呼びやすい呼び方でいいよ。』

「じゃぁ私もそう呼ばせて頂くわ。」

『どーぞ♪』



佐倉さんはいかにも元気っ子。
今井さんは冷静で落ち着いている子。

正反対の二人がどうして仲が良いのか疑問だ。

ただ、息はぴったり。
二人の喧嘩はほぼ漫才だ。



「ひなたはウチと同じアリスもっとるんよね。
なんか嬉しいわー!」



えへへ、と佐倉さんは照れ笑いをする。

この子見てると和むなぁ。


そんなことを考えながら席に着こうとした矢先。



チリン、チリン



『・・・!』



耳元で、鈴の音がした。



「・・・どうしたの?」



私の目の前にいた乃木君が不思議そうにしている。

急停止したら、不思議だよなぁ。



『おはよー、乃木君。
ちょっと用事思い出したから行って来る。』

「え?!今から?!」

『大丈夫。
鳴海先生に言って行くから!』



またねーっ、と手を振りながら教室を飛び出した。


あのヤロー、授業の時間には呼ばないって言ってたくせに・・・。

私は鈴を鳴らした奴、ペルソナに対して口に出さずに文句を言う。



「おい、どこ行くつもりだ?」

『あ、おはよー日向君。』



廊下の前方にいた日向君に挨拶をした。

日向君は走っている私の手を引っ張り、そのせいで私の足がとまる。

かなりがっちりと手をつかまれていた。



『どーしたの?』

「どこに行くか答えろ。」



日向君は私を睨みながら命令口調で言う。
後ろから乃木君も来ている。

なんで警戒してる癖に絡んでくるんだ。



『日向君はどこだと思ってるの?』



必殺質問返し!!


私は微笑んで、試しに尋ねてみた。
授業の始まりが近いせいか、廊下には私たち三人しかいない。
広い廊下に、私の声が響いた。



「ペルソナ・・・。」



日向君は小さい声でそう呟いた。
静かな空間では十分響く声。

勘、鋭いな。
これじゃぁバレるのは時間の問題か・・・。



『なんでペルソナ?』



ここで軽く首を傾げる。
そして、何言ってだこいつ、的な目。

そんな私をみた日向君は黙ってしまった。



『神野先生、だっけ?
あの人に朝呼ばれてたの忘れてて!
絶対怒られるよねー。』



にゃはー、と調子良さそうに笑う。
勝手に神野先生の名前拝借。



「・・・・・・。」

「神野先生?」

『そ!
だから本部の方に行ってくるー。』



はなして?と言うと日向君はゆっくりと私の手をはなした。



『じゃ、また後で!
その怪我、かえってきたら治すから。』



手を振りながら走って日向君にそう叫び、角を曲がったところで瞬間移動をした。








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