夢の奏で
□9.心にあるのは
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『い、痛い、すごく痛いよ棗君。』
「棒読みだろーが。」
アリス祭二日目、棗の奴隷になってしまったことから一週間くらい姿をくらまそうと考えていた私は、その考えが読めていたらしい棗に早々と捕まってしまった。
だって、何されるか分かったもんじゃない!
色々聞き出されても困るし・・・。
ひなたちゃん、秘密主義でいたいのよ。
ま、そんな命令私が聞く訳ないか。
「あ、ひなたやー!」
『蜜柑も一緒なんだー。』
蜜柑はルカと一緒に私達を待っていた。
棗の奴隷となってしまった私達は荷物持ちとして棗とルカとアリス祭を回ることになっている。
蜜柑は午後から蛍やいいんちょーとお買い物に行くみたいで、なんとか頼み込んだみたいだ。
すごく嬉しそう。
「ねね、どこから行くー?」
「お前に決める権利はねーよ。」
はしゃぐ蜜柑、こわーい棗。
2人の言い争い含め、話し合った結果技術系エリアに行くことに。
「うわーっ!!すっごーい技術系!
体質系&特力系とは規模が大違い!」
エリアに入ったとたん、蜜柑の目がいっそう輝いた。
技術系エリアには街みたいに建物も人もいっぱい。
そして、さすがというべきか、不思議なものもいっぱい。
『テンション高いねぇ。』
「だってすごいやん!」
蜜柑は花咲き誇る笑顔であっちいったりこっちいったり。
ルカめ落ち着かせようとしてみるも、効き目ナシ。
そのうち棗の怒りが飛ぶんじゃないか、と思い始めたら。
「こけー?!」
「奴隷の身分忘れてはしゃいでんじゃねーよボケ。」
『蜜柑・・・っ』
ビスケットを食わされていた。
ちなみに私は口が鳥のくちばしに変わった蜜柑をみて爆笑。
ルカの背中に隠れてさせてもらった。
「次、どこいく?」
誰がみてもスッキリと顔に書いている棗はマップを見ながらルカに尋ねる。
「うん、えっと・・・。
ひなたは買いたいものとか行きたいとことか、ない?」
『あ、お気遣いなくー。
みんなが行きたいところに行こー。』
「とりあえず歩くか。」
棗は私をチラ見した後、前をむいた。
『(アリス祭、かぁ・・・。)』
「ほら、ひなた、陸!
あっちいってみよ!」
「早くこないとおいてくぞー?」
『柚香、いず兄待って!』
「ひなた、行こ?」
『うん!』
微かに残る遠い記憶。
あのときのあの人に、蜜柑の笑い方は同じで。
「ひなた?」
『う、あ、何?』
「どうしたの?急にぼーっとして。」
具合悪い?と眉を下げているルカが目の前にいた。
何て顔をさせちゃってるんだ私は!
可愛いなぁルカぴょん。
・・・じゃなくて。
『ううん、全然元気!
心配ありがと。』
「そっか、良かった。」
「・・・・・・。」
Vサインをしてにこっと笑う。
なに感傷に浸ってるんだろ、私。バカー。
おかげで棗にもみられるし。
『あれ、蜜柑は?』
「あそこ。」
ルカの指した方向をみると、ロボットを呆然としてまている蜜柑がいた。
ロボットの操縦席には見覚えのある顔が。
『蛍だ。』
何食わぬ顔してロボットを操る蛍。
数多くのファンやスポンサーを残したまま、ロボットは鳥に姿かえて飛んでいってしまった。
『つくるの大変そう!
一人で作ったのかなぁ。』
「ひなた、何かずれてる。」
『そう?』
ルカからツッコミをもらっているときに蜜柑が帰ってきた。
蛍の凄さに唖然としている。
いつの間にか現れたパーマちゃんがスポンサー云々の話しを始めていた。
私は、というと。
『あ、これ一つください。』
「はーい!」
話しそっちのけてがっつりお買い物。
しかも食べ物しか買ってなかったり。
このお菓子おいしいって美咲先輩が教えてくれたんだよね!
良かったー、買えて。
うん、帰ろーかな。
「おい。」
『何だい、棗くん。』
あれ、開いた口に固形物が割り込んできた。
棗は私の口に自分のお菓子を突っ込んだ。
あ、これ美味しい。
「お前、静かすぎると気持ちわりぃ。」
『失礼だなぁ、棗くんったら。
心配してくれたの?』
「んなこと誰も言ってねぇ。」
『このクッキーどこで買ったの?』
「話し変えんの早すぎだろ。」
でたな、ツンデレ!
なんだかんだ心配してくれて、クッキー買ったお店も教えてくれるこいつはいい奴なんだろうな、生意気だけど。
そしてなぜだか、帰る気でいたこともバレていた。
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