大戦

□争いの理由
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陸抗「私だってあなたに斬られるのも、あなたを斬るのも嫌です。ですが、呉のためなら全てを投げ出す覚悟でいなければ…私の存在なんて誰も気にしなくなってしまうでしょう?」

羊コ「そんなこと…!」

陸抗「フフ、かばわなくてよろしいですよ。人間なんて皆、同じように孤独なんですから。」

相変わらず陸抗殿の言いたいことはイマイチ分からない。でも…この人は"呉のため"に晋に立ち向かい、死ぬことを覚悟しているようだ。

陸抗「…でも、今の私は孤独ではない。父が亡くなり、父を恨んでいた人にどんな復讐を受けようと、私にはあなたがいる。」

羊コ「え…?」

復讐って…?今まで話してくれなかったのは何故?

陸抗「今や、自分で自分が分からないんですよ…毎日のように父への復讐を受け、呉に自分が存在する理由さえ分からなくなって…でも、不思議なもので頭だけは呉にいなければならない、って思うんですよ。何なんでしょうかね、ホントに…」

悲しげな憂いを含んだ表情を見せた。初めて見る表情だった。いつも、精神的に幼い私を引っ張ってくれた、大人な対応をしてくれた陸抗殿とは思えなかった。

羊コ「"復讐"って…」

無神経な質問だと思ったが、聞いてしまった。否、聞くしかないと思った。

陸抗「…あまり話したい内容ではありませんね」

羊コ「あっ…ごめんなさっ…」

私は慌てて謝った。やはり、聞いてはいけなかったのだろうか。
すると、笑顔を見せてくれた。

陸抗「いえ、謝らなくても…いずれ、あなたに話さなきゃならないことですから」

羊コ「そう、なんですか?」

陸抗「えぇ。復讐っていうのは、父が亡くなり、すぐに始まりました。父はかなりの権力者でしたから、生きてる間には手を出せなかったのでしょう。父は将兵を省みずに献策をしていたので、おそらくその復讐なのでしょう」

羊コ「でも…そんなのって…陸抗殿には関係ないんじゃ…」

陸抗「…おそらく、父に対する最も効果的な復讐だと思ったのではないでしょうか。それで、私は毎日のように数人に抱かれました」

羊コ「…っっ!抱かれたって…」

陸抗「えぇ。毎日毎日、愛のない性行為を強要されたのです。私もこの時ばかりは、こんな女みたいな華奢な体を憎みましたよ。抵抗などできやしない」

陸抗殿は淡々と話していった。こんな辛いことを何故、今まで言ってくれなかったのか、疑念にかられた。

陸抗「それからですよ…呉にいる理由も自分の価値も分からなくなったのは」

羊コ「…価値…なんてっ…自分で決めることじゃ無いじゃないですかぁっ!」

つい、怒鳴ってしまった。陸抗殿が驚いているのが手に取るように分かる。

陸抗「叔子…?」

羊コ「だって!私は陸抗殿のこと!天下なんかより家族なんかよりも大事だし…!斬らなきゃいけないような仕事なら今すぐにやめる覚悟だってあるし…!」

陸抗「…」
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