ネタ帳

□SAOネタ
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持って行かれそうな意識を、壊す勢いで握り締めている絶賛耐久度激減中の愛刀の金属音を鳴らすことで繋ぎ止める。
頭の先から足の先、そして――心。余す所なく燃えるように熱い。高々小さな無機質な音一つで冷めるわけなんてない。しかし目先の戦闘で埋め尽くされていた《決心》を浮上させるのには丁度いい。

四方八方逃がさんとでも言うように取り囲む畏怖の念を抱かせる姿のMobたち。
耳の奥深くまで残渣する異様な雄叫びは、きっと《はじまりの街》から出たことのない、このゲームがクリアされるいつの日かを信じて留まるプレイヤーたちを恐怖で覆い尽くし動けなくさせるんだろう。



――でも、おあいにくさん。

こちとらそんなヤワな性分じゃあない。


心情を代弁するように水色のエフェクト光を纏う刀身。鬱陶しい程に打ち込まれる連続攻撃を耐え、システムアシスト込みの力任せの横薙ぎ一閃で押し退かせてくれた。
愛刀が作ってくれた僅かな隙に後方に飛び退りながら距離を取る。
文字通りの、しかし物理的行動の柄を握ったままの手の平返し。親指の第二関節の腹を中指で強く弾き立たすことで外し、一度突き上げてから手前、後ろと数回動かす。
理解しているのか、プログラムされているのか――そんなコト、知ったこっちゃない。




「……かかってきなよ」


現状で作れるだけの煽り顔をする。
鼓膜を振動させるには十分過ぎる声とはいえない蛮声がこびり付く。間を待たずに不快な感覚が全身を駆け巡り、息が詰まるのに加えて肺が悲鳴を上げた。
腕、肩、胸、胴、足。身体の至る部位を貫き抉られ突き立てられ、誰が見ても一発理解の串刺し状態。めんどいの一感情に任せたのが原因なのは自ずと。回復アイテムを使わなかったおかげでイエローゾーン半ばだったHPバーが左へ減っていく始末。

つくづくと思う。
この常に死と隣り合わせである世界で何バカなこと――いつだったか命を粗末にしたがる自殺行為とかなんとかかんとか、なんてのをどっかのギルメンに言われた――してんだろ、ってさ。

でもハッキリ言って、誤解だよ。


アタシは――




「……こんなトコで、死ぬ気はない!」


緩めていた柄を握り直し、目の前でせせら笑う敵の懐、もとい心臓――クリティカルポイントに突き立てる。至近距離からの喘ぎに似た絶叫。「耳壊れそう……」なんて悪態の一つや二つ言ってやろうかと思う間も余裕なんてものもない。深くねじ込ませた刃を真横に薙ぎながら足に踏ん張りを利かせ、各々の得物を貫かせてることで余裕をかましてる敵一行を回転切り払い。

ふっと力が抜けるような感覚。発動させていたソードスキルが終わった頃合いを見計らったように、身体の芯から竦み上がらせるような怒気を孕んだ咆哮を上げられる。
途端に刺さったままの得物を抜こうと強行されて相棒を落としかける。
むやみやたらに引ん抜くべく、ただ力ずくに動かされる。呼吸が苦になって引き裂かれるような激痛に苛まれる。やめてと言ったとこで、泣き叫んで許しを請うてみたとこで、所詮は設定されたプログラム通りに動くだけの奴らには通用しない。

なら、やることはこっちも同じ。
生憎と刃物ブッ刺されて笑顔で許せる程人間出来てないし――逆にそんな変態チックな人ホントにいたら怖すぎる――当然許すことも出来ない。やられた分報復してやれば貸し借りしてないけどオール解決。




「キシャアアアア!」

「フグルルルル!」

「……っ、だから……る、さいっての…………!」


身体を捻って逆立ちの要領で両足を開きプロペラ顔負けの回転。共に反転しぶら下がる敵を巻き込みながら支え手二本を一本とバランスを取りつつ、柄を握る空きの手で怒濤の如く斬り荒ぶ。突き刺さったまま着実にバーを削る武器の継続的鈍痛を歯噛みで耐えながらスキルを振り翳し続ける。

正直、キツいの一言じゃ終われない。
重くのし掛かる疲労感に霞んできた視界、鈍化の色を放つ相棒。極め付けには、レッドゾーン突入。否応無しに全部が全部限界間近と警告を余儀無くされている。
暴れ回ることで抵抗の意を露呈する敵の有り様にまだなのかとイラつきと身体の痛みとが飛び交う。今にも吹っ飛びかねない意識をギリギリの所で持ちこたえさせていると、きっとあるハズの、確認出来ない高さに存在している天井に届いただろう一際大きな咆哮の後にピタリと全身硬直させる。
掌底に力を込めながら減速しつつ眺めていると、青色のポリゴンに変わってガラスを割るような大音響と共に爆散した。



 
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