<小説>Rainy


□prologue
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 「雨、好きか?」




これはキミの口ぐせ。


面白いよね。
キミは私に何回もこう聞いてきた。



普通なら、
ちょっとおかしいけれど。

でも、キミは大まじめ。



ただ純粋に雨が好きで。
周りの人にもそうであってほしくて。



実は私ね、

あんまり雨、好きじゃ無かった。



でも。


キミに会って。

雨の日にはキミと会えて。


私は雨を好きになれたの。


雨の日にはキミがいたから。





でも。


あなたはいなくなった。


梅雨明けと共に消えてしまった。




雨と一緒に帰ったのよね?


それならきっと、
私は平気だから。




どこかにきっと、
キミはいるんだ。


そう信じていられる限り、
きっと私は大丈夫。



キミと出会った梅雨から1年。


キミは雨でも私に会いには来てくれない。


やっぱり心配はあるけれど、
キミはきっと生きている。



そう信じてるから。


傘は返します。



だからまた会いに来てね。




会えるよね?


きっと。


また。


雨の日は。


私はずっと、
あの枝の下で待ってます。





美空 晴
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