へ夕利あ

□「好きだから」は なんの根拠もない最大の理由
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自分の仕事が終わって
明日は仕事の予定すらなくて
そんな時(なんてなかなかないけど)
思い出すのは いつも決まって同じ顔





「さて 本物を拝みに行きますか」





アーサーの事を考えながら
潜るユーロトンネルは
仕事で通る時よりも短く感じて
自分がどれだけアーサーを好きか
身をもって思い知らされる





車を定位置に止めて
サイドミラーで襟を正す
扉の前に着けば
足を止めて深呼吸をひとつ



そこまでしてもにやけそうになる俺は
相当重症だと 自分でも思う



呼鈴を鳴らすと
遠くでどんっと音がしてしばらく
アーサーが顔を出した

俺が挨拶に口を開くよりも早く
アーサーから捲し立てられたのは





「良いところに来たなっ
 紅茶淹れろ仕事手伝え飯作れ!!」





そう言うアーサーの表情が
あまりにも必死そうで
追い出されるのどっちがましだろうとか
考えながら つい頷いてしまった





折角淹れた紅茶に文句を言われながら
俺でもできる仕事を手伝って
適当なところで夕食の準備に取りかかる



完成してから仕事部屋に戻ると
さすがに山盛りあった仕事も終わってた



「さ ほら坊っちゃん
 冷めないうちに食べよーぜ」



ここまでこき使われて
これでまた反抗されたら
お兄さん怒っちゃうぞ☆とか
頭の隅で思いながら言ったら
アーサーがじっと見つめてきた
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