Q.E.D〜なんちゃって劇場〜

□正しいしゃっくりの止め方?
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「あははっ…マジで?」


可奈が爆笑しながら、バンバンと机を叩く。

「超ウケる〜♪」


「ちょっと可奈、笑い過ぎだよ」


「だってさぁ…。あ〜可笑し…ヒック…!?」


「ちょ、どうしたの?」


「やだ…笑い過ぎて…ヒック…しゃっくりが…」


「ぷっ。そっちの方がよっぽどウケるじゃん」


「馬鹿笑いしてるからだよ」


一緒にお喋りをしていた梅宮と香坂が、呆れたように笑う。


「だって…ヒック…面白かった…ヒック…だもん…」


「ねえ、大丈夫?」


「だい…ヒック…じょぶ…ヒック…じゃない…ヒック」


本人にとっては一大事なのだが、外野からすると、かなり滑稽に見える。


「ヒック…誰か…ヒック…止めて…!」


「しゃっくりってどうすれば止まるんだっけ?」


「びっくりしたら止まるんじゃない?」


「じゃあ、誰か可奈を驚かせなよ」


「やだよ。びっくりしたついでに殴られそうだもん」


「あ、それは言えてる」


私をどんな人間だと思ってるんだよ!――そう文句を言いたかったが、さっきから止まらないしゃっくりのせいで、そんな気も失せる。


笑われているのも腹立たしいが、何よりこの状況をどうにかして欲しい。


「何でも…ヒック…いいから…誰か…ヒック、何とか…ヒック…して!」


「うーん。とりあえず、少しの間、息を止めてみれば?」


言われた通り、可奈は自分の鼻と口を押さえて、息を止めた。




………。

………。


……………。




顔を真っ赤に染めて堪える事、数十秒。


「そろそろいいんじゃないの?」


「プハァー…苦しかった…」


「あ、止まったみたいだね」


「うん…助かっ…ヒック!」


「あちゃー、ダメか」


「息を止めて水を飲んでみたらどうかな?」


「あ、それ、私も聞いた事がある」


「…ヒック…じゃあ、水…ヒック…飲んで来る」



*****



「…ヒック…全然…ヒック…、止まんないじゃない…」


しゃっくりをしながら水をがぶ飲みしている可奈に、「何してるんですか?」と燈馬が声を掛ける。


「と…ヒック…ま…ヒック…くん…」


「一体どうしたんです?」


「しゃっくり…が…ヒック…止まらない…の…ヒック…」


「なるほど」

と、しばし燈馬は考える。


その間も、しゃっくりは止まらない。


「ねえ…ヒック…何とかしてよ…ヒック!」


「わかりました。ここではなんですから、とりあえず屋上に行きましょう」


屋上へと向かう階段を昇りながらも、しゃっくりはまったく止まる気配が無い。


「ヒック…ヒック…」


「ちょっと荒療治になりますが、良いですか?」


「これが…ヒック…止まるなら、…ヒック…多少の事はガマンするよ」


「その言葉、忘れないで下さいよ?」


「わかったから…ヒック…早く何とか…ヒック…して!」


「では、水原さん、ちょっとの間、目を瞑ってて下さい」


「……?」


――燈馬君に任せれば、きっと大丈夫だよね。


「直ぐに済みますから」


―――と、次の瞬間。


―――チュッ。


可奈の唇に柔らかい感触が伝わる。


「○×※▲□!!!」


あまりの衝撃に、息をする事すら忘れた可奈が、口をパクパクさせる。


「なっ…なっ……っ」


「言ったでしょう、荒療治だって」


燈馬はニッコリと微笑む。


「だ、だからって!!」


――しゃっくり止める為に、キスするか、普通?


そんな気持ちを見透かしたように、燈馬は答える。


「しゃっくりを止めるには、驚かせるのが一番効果的ですからね。
水原さんの性格からして、ちょっとやそっとの事ではびっくりしないし、下手な驚かせ方をしたら、逆に僕が返り討ちに合いかねませんから」


「むぅぅ…」



結果的に、無事にしゃっくりは止まったものの、何だか釈然としない可奈だった…。




END.
 

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