駄文

□恋愛未満
1ページ/6ページ




冬休みを間近に控えた、12月のある日。



遥は友人と二人で学校の中庭のベンチに座っていた。



「…寒いね」



「ほんと寒くて嫌になるね」



「こう寒いとさ」



「うん…?」



「何か人肌の温もりが恋しくなるよね?」



いきなりの大胆な発言に、遥はどう答えていいか解らずに固まる。



「あたしに同意を求めないでよ」



「だってさ、クリスマスも近いし、彼氏とラブラブしたいじゃん?」



「ラブラブ…って。
あんた彼氏いたっけ?」



「ものの例えよ」

と、友人は苦笑いする。


「その点、遥は良いわよねえ」



「は?」



「鳥越くんていう、イケメンで秀才の彼がいるじゃない」



「…ばっ…あれは、ただの幼馴染みよ!」


真っ赤になって否定する遥。


「しかも、イケメンて…まあ、頭が良いのは認めるけど」



「ふーん?」



「あいつのどこが、イケメンな訳?」



「知らないの?」


からかうように、友人が言う。



「鳥越くんて、結構人気があるのよ。
背が高くてカッコいいし、三年生になってから、何だか雰囲気が変わったよね」



雰囲気が変わったのは、あの事件のせいだろう。


あの日を境に、「僕」から「私」に一人称が変わった。



今は、父親と同じ道を志し、年明けには受験も控えている。



「遥は鳥越くんと一緒の大学をうけるんでしょう?」



「まあ、ね…」



「幼稚園から大学まで一緒なんて、凄いよねえ」



「大学に関しては、受かれば、だけどね…」



―――そう。

遥と衛では、学力にかなりの差がある。



目指す目標は同じだが、ある意味、同士でもあり、ライバルでもあるのだ。



「受験かあ…。
やだやだ、せっかくクリスマスの話してたのに、いきなり現実に引き戻された」



「しょうがないよ、あたし達、受験生なんだもん」

と、遥は笑った。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ