駄文
□Answer
―羽生バージョン―
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『好きだ、ずっと前から』
『…愛してる…』
突然の愛の告白は、秘かに想っていた幼馴染みの口からでは無く、いつも反目しあっている上司から告げられた。
『賭けをしよう。
この印が消えるまでに、お前の気持ちがどう変わるのか』
日に日に薄れて行く胸の紅い跡を指でなぞりながら、遥は自分自身に問う。
―――鏡よ鏡。
あたしが愛してるのは誰?
*******
「あら、三島警部補、そんな所に絆創膏貼って、どうしたんですか?」
署内ですれ違った顔見知りの婦警が、意味ありげに笑う。
「――もしかして、キスマークとか?」
「ばっ…。
そんな訳ないじゃない、ただの虫刺されよ」
些か挙動不審気味に首筋を押さえながら否定する。
ベタな言い訳だが、他に思い付かない。
「あ、赤くなった。
もしかして、図星ですか?」
「やあねえ、高校生じゃあるまいし、そんな訳無いでしょう」
「ですよねえ。
警部補の彼って、そういう事をしそうなタイプに見えないし」
「へ――?」
「トボケないで下さいよ。
よく現場にも同行してるじゃないですか、背が高くて眼鏡をかけた、ハンサムな彼」
「あ、あれは、ただの幼馴染み!
助手みたいなものよ!」
まさか婦警達にまでそんな風に思われていたとは。
ていうか、衛って、他人から見ると、ハンサムなんだ。
「えー、そうなんですか?」
婦警はちょっと残念そうな顔をする。
「あ、でも、『羽生警部派』の子達は喜ぶかも♪」
「何、それ…?」
「三島警部補と羽生警部がお似合いだ、っていう意見も根強いんですよ♪」
「……」
遥が反応に困っていると、他の婦警が彼女を呼びに来た。
「あ、すみません、すぐに戻ります。
――じゃ、失礼します」
慌てて、彼女は遥に一礼して持ち場に戻って行った。