駄文
□1000回のキス
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――後悔役に立たず。
いや、後悔先に立たず、だっけ?
そんなのどっちでもいい!
とにかく、三島遥は今、猛烈な後悔と自己嫌悪に襲われていた。
「…ったく、何で今さら…」
隣で眠る、『後悔』と『自己嫌悪』の元凶に向かって、愚痴る。
「あんたって…いつも、自分勝手なんだから…」
「……その自分勝手な奴に惚れてたのは誰だ?」
「何よ、狸寝入りしてた訳?」
「お前の独り言がデカいんだよ」
そう言って、小澤渚は煙草に火を付けた。
「その顔だと、『後悔してる』って感じだな」
図星を指され、遥は拗ねて目を反らす。
こいつ、昔から、変な所で勘が鋭いのよね。
「俺の勘が鋭いんじゃなくて、お前がわかりやす過ぎるんだよ」
「むぅぅ…」
「そんなに嫌か?
酔っ払った勢いとはいえ、昔の男と寝たのは」
******
「三島、お前、まだ処女だろう?」
バイト先の飲み会の席で、いきなりセクハラとも取れる発言をされ、遥は真っ赤になった。
「なっ…。
そんなの小澤さんに関係ないでしょう!」
「当たりか」
「……」
「初めては、上手い奴とやった方がいいぞ。
なんなら、俺が――」
バシッ。
言い終わらない内に、平手が飛んだ。
「…最低…」
――出会いは最悪。
こんな失礼な奴と一緒に働くなんて…。
大学二年生の遥は、いきなり気が重くなった。