駄文
□1000回のキス
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亡くなった父親が残してくれたお金や、奨学金のお陰で、何とか大学に通えてはいるが、やはり、母親の負担を少しでも軽くしたい。
「シフトも融通利くし、時給も良いんだよ♪」
友人の甘い誘いに、即決した、居酒屋でのアルバイト。
いくら気にくわない同僚が居ようが、簡単に辞める訳にはいかない。
――そうよ。
別に仕事以外で係わらなければ良いのよ。
遥は自分に言い聞かせたのだった。
*******
「あんたの第一印象は最悪だったわよ」
脱ぎ散らかした下着を身に付けながら、遥は言った。
「今でも不思議だわ。
何で、あんとなんか付き合ったんだろう?」
「ずいぶんな言い草だな。
昨夜はあんなに悶えてたくせに」
「よ、酔っ払ってたせいよ!」
「初めての時もそう言ってたぞ」
渚は愛しい者を見る眼差しで、笑う。
あの頃と同じだ。
悔しいけど、この笑顔が好きだった。
「何見とれてんだよ?」
「ば、違うっ!」
「でもさ、お前、綺麗になったな」
「……」
言われ慣れていない台詞に、思わず固まる。
「なあ……」
「…な、何…?」
「俺達、やり直さないか?」