仙子ちゃんと伊作子ちゃん話其の2

□どうすればいいかわかんない
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うわ…まず
い、と思うより先に涙がぼろぼろ溢れ出た。ギョッとする食満くんの顔。
ごめん、君が悪いわけじゃなくて、ああもうとまんないや。
食満くんを相手にする余裕がなくて、私は構わず床に座り込んで泣いた。
泣き顔見られたくないからハンカチで顔おさえて泣いた。
気まずくなって出て行ってくれる事を祈る。

けど、食満くんの気配は一向になくならず。
何なんだろう…用件あるなら早く言ってよ。
泣けば泣くほど仙子の顔がちらついて悪循環だし。
暫く悪循環を繰り返して、繰り返して、繰り返して。
落ち着いてくると
「…何かあったのか」
食満くんが口を開いた。
ま、まだいたんだ…。
とっくにいなくなってるものと思ってたけど…かれこれ一時間は泣きっぱなしだったし。
答えられず、しゃくりあげながら首を横にふる。
「良いから言えよ」
言えるはずない。
また首を横にふる。
「…立花のことか?」
仙子の名前が不意に出てきて激しく体が反応した。
「…喧嘩したろ」
身体中がぎゅって強張った。
仙子…大好きな仙子。
でもきっと仙子はもう私の事なんか大嫌いだよね。
あんなに仲良しだったのに、もうずっとこのまんま…なんだ…。
「ああ、悪かった。もう聞かないから」
困ったように食満くんが言う。
聞かないついでに出てってほしい。
一人になりたいのに。
きっと私の事心配してくれてるんだろうけど、ごめん。
今は話する気全然ない。

暫くして、顔を上げると屋上は私一人だった。
辺りを見回すと、食満くんの代わりに大きな夕日が街を全部真っ赤に飲み込んで行くのが見えた。

赤…

仙子の好きな色…

もう泣きすぎて目がカラカラ。
それに何だか疲れた。
…もう帰ろう。

立ち上がった時

「お、帰るのか?」
食満くんだ。
また戻って来たんだ。
私は泣いてぼろぼろの顔を見られたくなくて俯いた。
「ごめんね、用事あったんだよね」
「あ、いや…これ渡そうと思っただけだ」
ポケットのふくらみを取り出すと、
「…ココア」
「温くなってしまったけどやるよ。誕生日プレゼントだ」
プレゼント…。
私が泣いてたから渡し損ねちゃったんだ。
本当はあったかかったろうに。
「ごめんね…」
「いや、俺こそ悪かった。ずっと付きまとって鬱陶しかったろ」
俯きながら首を横に振る。
「ココアありがとう。優しいんだね」
「いや、優しくねえから。全然」

暫くの沈黙。
私は仄かにあったかいココアを大事に上着のポケットに入れた。

「…好きなんだな」
「え?」
「立花の事」
思わず泣いたままの汚れた顔をあげた。
食満くんの顔が真剣だったので驚いた。
…なんだろう、今の言い方…すごく引っかかる。

まさか…


ばれた?私と仙子の事…


だとしたら…まずい。
仙子と私の事は絶対秘密なのに。
なんとか場を取り繕おうと一生懸命話題を考える。



けど





「付き合ってるのか?お前ら」
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