忍たまテキスト1

□三位一体
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それでも、確かに人よりは丈夫にできていると思う。

足の骨を折った痛みも、腹に穴が空い
たような痛みも、腕がねじきられそうな痛みも、五体引き裂かれそうな痛みも、寝たきりになることなく数週間で完治してしまう。

だが

辛いのだ。

確かに、五体はここに在る。

しっかりと二本の足で大地に根付いているというのに。

同時に、襲いかかる「目に見えぬ痛み」が

何よりも 辛いのだ。

それはふいに、突然。

首筋から死んで逝くように硬直する。

全身が痺れる。

頭の、首の付け根から後頭部のあたりを手でつぶされそうなくらい強く掴まれる。

ああ、流れてくる

感情の渦が

満ち潮のように、徐々に、激しく、激しく。


痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い


分かっている、痛いのは自分じゃない他の誰かの感情だ。

それでも、脳内を、気管を、肺を、腹を、足を、駆け巡る。

痛い、が全身を巡る。

止める術を 知らない。

流れをどこかでせき止めなければ、体が蝕まれ、自由がきかなくなる。

自分の体が、自分じゃなくなる。

もう一人の自分が、居心地の悪さに悲鳴をあげる。

バランスが、崩れる。


崩れ落ちた。



それは僅か一秒の出来事。




「気づいたか」
「…」
目が開けられない。
光が眩しすぎる。
手で顔を覆い隠そうとするも、動かない。
「顔…まぶし…」
「ん?ああ」

動かない、動けない、動きたくない。
まだ体を巡っている、「痛い」。
そして引き裂かれそうな、自分の悲鳴。

体内にこれだけの生き物と共存をはかっているなんて、一体誰が信じようか。


顔に被さる、ぬるい感触。
少しだけ、此処に戻れた。



戻るべきだったろうか。
あのまま、逝くべきだったろうか。
このぎこちない、生きた心地のしないずれを感じながら、まだ生きなければならないのか。

親には感謝している。
友人にも感謝している。
日々の生活にありつけることに感謝している。

だが、いくら満たされようとも、どうしても保つことができないのだ。
自身を支えるはずの軸が、ないのだ。

心よ強く在れ、強く在れ、何度望んだろう、何度祈ったろう、何度しがみついたろう。

精一杯の努力はした。
しかし、ないものは、ない。
どうあがいても、これと、これらと、上手くやっていく他、ない。



「生き地獄だ…」

「毎度大けがしていたらな。嫌にもなる」

「…ここは地獄か…」

「地獄だろうと足掻かねば。心の臓が動く限りは」


ああ、友よ。


お前とこの痛み、少しでも分かち合う事ができたら。


わずかな死を許してくれるだろうに。


えもいわれぬ、不確かでいびつな何かが。


這いずり回る感覚を。










友と最も近い距離に在るのだが、今とても孤独を感じずにはおれなかった。



………………………
誰だ…これ…
グロッキーな時に書けばそれっぽく痛みが伝わるかしらと思ったけど、脳内がグロッキー中に言葉なんぞうまく回るはずもなく。

だめだもう…。

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