忍たまテキスト2

□道端
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バイトの帰り道、暗い夜道が行灯に照らされる。
「ねえ、先生」
「なんだ?」
「こないだの神様の話なんだけどさ、何で神様っておれ逹の前にでてこないの?」
「神様が見たいのか?」
「うん。だってさ、お寺とか飾られてる像見ても皆形違うじゃん。どれが本当の神様かわかんないよ」
「そうだなあ、あんなにいたら大変だなあ」
「しかもさ、まんだら…だっけ?あのでっかい掛け軸みたらこおぉんなに神様だらけ!どれが偉いんだか…おれ、頭こんがらがっちゃうよ。だから知りたいんだ。本当の神様って奴を」
「よし、じゃあきり丸に特別に教えてやろう。あれが神様だ」
「あれ?…って、先生…どこにもいやしないぜ?」
「いるじゃないか。すぐそこに」
「…どこ?」
「そこに」
「先生、おれの事からかってるでしょ」
「からかってなんかいない」
「だってここにいるの、おれと先生だけだし。先生が神様だなんてありえねえよ」
「意外とそうかもしれんぞ?」
「絶対ないね!ありっこない!」
「じゃあ、それだ」
「それ…って石ころ?ますますありえない」
「それなら、これだ」
「それ、行灯じゃん…いい加減にしてよ!もういい!」
「きり丸、そう怒ると神様がみえなくなるよ」
「先生が怒らせるようなこと言うから!」
「俺は本当の神様をお前に教えてるだけだ。道端に転がっている石ころもそうだし行灯だってそうだ。夜空の星や草木だって全部神様なんだ」
「ちっともわかんないよ!本当の姿見たいのに余計混乱した!」
「ちょっと分かりづらかったな。すまんすまん。正解は『お前が目に見えるもの全部』だ」
「…やっぱいい」
「今お前、俺が嘘ついてると思ったろ」
「…」
「信じられないのも無理はない。頭のいい殿様だって信じられないんだからな。だけど神様は一人一人をくまなく見守らなきゃならないからたくさんの物やたくさんの人に宿っているんだ」
「…神様って空の上にいるんじゃないの?」
「いつも空の上にいたら軒下の人がみえないだろ。それに空の上からでは俺逹のつむじしかみえない」
「っはは!確かにつむじじゃあ誰が誰だかわからないよね」
「だろう?同じ目線に立たなければ相手の事がよく見えないし、時には見上げる事も大切だ」
「へええ…それじゃいちいちおれ逹の様子見る為に形かえなきゃいけないなんて大変だなあ…ってことは、神様に本当の姿なんてない、ってこと?」
「うーん、お寺にあるような仏像を想像してもいいし、そこらへんにあるお前の気に入ったものでもいい。それを見ていいかんじがするかどうか、そんなもんで決めていい」
「何だよそれ、えらく適当すぎやしない?」
「そんなもんだ。神様の姿は自分が見えるものでしか決められない。誰かが仏像を神と崇め奉ろうがそれはお前にとっての神様かどうかなんてわからないだろう?」
「うーん…でもなぁ、『これ!』っていう決め手が無いとどうも決めづらいよ。下手したら道端のうんこだって神様になっちまう」
「神様は自由だからなあ、うんこってのもありかもしれないぞ」
「えーーー!それは嫌だ!」
「もしお前がそれをみていい感じがしなければ神様じゃないってことだ。そうだなぁ…例えば俺はあの満月をみてすごく綺麗だ、心が清々しい…そう感じるからきっと神様が宿っていると思う。どうだ?」
「うん、それならわかるかも。ああ…今日は満月なんだ。きれいだなぁ…」
「なあきり丸、神様が夜なのにこんなに明るく照らしてくれてるんだから夜の神様探ししないか?」
「神様探し?」
「お、キキョウ発見。色が気高い紫だからこれも神様…っと」
「えーずるいずるい!その花さっきおれが見つけたのに!ええと…じゃあおれこのすっげぇいい匂いするキンモクセイの木!」
「でかいのもってきたな…なら俺は小川の蛍だ」
「わぁ…たくさん飛んでらぁ…あ、ここにも発見!」

いつの間にか行灯の火は消えていて、俺達は家までの明るい夜道をずっと探しながら歩いて帰った。











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こうねつにうなされながらかいたのでもう…

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