忍たまテキスト2

□山菜
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**山菜-伊作とトモミ-**

「先輩、こんなに採れました」
「やあ、すごいじゃないか」
善法寺先輩に採れたて山菜を見せると「ありがとう」と笑顔を向けられた。

私、トモミ。
今日のお昼はいつもの学園長の思いつきで学園総出の山菜採り。
私はユキちゃんおしげちゃんと一緒に紅葉を楽しみながらおいしそうな山の幸をかご一杯に採っていたんだけど…いつの間にか二人とはぐれてしまった。
丁度困っているところに誰かが作った穴にはまって抜けられなくなった六年の善法寺先輩を見つけたので、六年とくの一の合同山菜採りの最中だったりして。
いつもこの人怪我ばかりしてるみたいだけれども、大丈夫なのかな。
「これは大丈夫…あ、これはちょっと危ないなあ」
「先輩詳しいですね」
「ほとんど毎日薬草摘みに山へ入ってるからね、いつの間にかそこら辺に生えているものの名称や効能など全部わかるようになってしまったよ」
へえー、先輩にそんな特技があったなんて。
伊達に保健委員を六年間務めていない。
食べられるものと食べられないものを分けてもらったら…え?これだけ?そんなぁ…。
あーあ、もう少し頑張らなくちゃ。
がっかりしている私に善法寺先輩は自分の山菜を私のかごの中に入れてくれた。
「えっ…せんぱ…」
「トモミちゃんが来てくれなかったら私はずっと綾部の蛸壺の中だったよ、だからそのお礼」
こんなにたくさん…。
ユキちゃんやおしげちゃんもきっと喜ぶわ。
…でも
「先輩はどうするんですか?」
「私のことは気にしなくていいよ」
とても嬉しいんだけど、さすがに全部もらうのは気が引けるなあ。
「先輩、これ、私と先輩の二人分の収穫ってことにしませんか?」
「え、でも…」
「私がそうしたいんです!いいでしょう?」
くの一として、男子に情けをかけられるのはやっぱり自分自身が許せないのよね。
何事もフェアでいかなくちゃ。
「わかった。じゃあお言葉に甘えて…」
先輩が私の手からかごを受け取ると、目の前を何かが掠めていった。
次の瞬間、先輩の手にあったはずのそれがぱっと消えてしまった
「え、あれ!?あれ?!」
「トモミちゃん上!」
見上げれば、山村喜三太似のサルが山菜かごをしっかりと持っていた。
「あっ!あいつ…」
「追いかけましょう!」
「よし…うわあ!」
「えっ、きゃあ!」
先輩は木の幹に足をひっかけて顔面から転倒、私は飛び乗った木の枝がいきなり折れて落下。
しかも落ちた足元に植物のつたが絡まって…ぬ、抜けない!
先輩も幹に足が挟まって抜けない状態。
なんなのよ一体!
「トモミちゃんごめん…!私が不運なばっかりに…」
「不運のせいにしないでください!こんなの運とか関係ないわ!」
きっとこれは試練よ、負けるもんですか!
「トモミちゃん…」
私は絡まったつたを苦無でばっさり切ると、起き上がってすぐさまそれを猿に投げつけた。
枝から枝へと飛び移るサルを驚かせるはずが、
「あっ!」
手元が狂って猿の足をさっくり切ってしまった。
猿がゆっくり落ちていく様を、私は動けずに見ることしかできなかった。
瞬間、私の真横を何かが横切り、私が「危ない!」と声を上げるより先に猿を抱きかかえて地面に着地した。
善法寺先輩だった。
さっきまで後ろでひっくり返ってたのに…なんて速さだろう。
私は唖然とした。
少し遅れて、きのこやら栗やらが先輩の頭めがけておちてきた。
「あだだだだだだ!」
お約束だけれども…栗は痛いでしょうね。
「大丈夫ですか?!」
「私よりもこの子だ。傷口を見なくては」
体毛から血が滲んで見ているこちらが身を切られたように顔を顰めた。
どうしよう…この猿、よく見たらまだ小さい。
私のせいで歩けなくなったらりしたら…。
心配でたまらなかったけど、先輩が触診を終え顔を上げるといつもの笑顔で
「心配ない、ちょっと傷が深いだけで神経は無事だ」
そう言うと手際よく止血作業にとりかかった。
よかった…。
私はへなへなと地べたに座り込んだ。
「ははは、びっくりしたね。でも刃物はもっと気をつけて扱わなきゃだめだよ」
「ごめんなさい。先輩がその子を受け止めてくれてなかったらきっともっと酷い事になってました」
「トモミちゃんの一声があったからだよ。ありがとう」
「え…?あ」

不運のせいにしないでください!

「周りから散々不運不運って言われ続けてたせいか、いつの間にかちょっとした失敗もすぐ不運のせいにしていたように思う」
それであんなに素早く動けたっていうの?
そんなに良い事言ったと思えないけど。
でも、たった一言であれほどの力を引き出せるということは…この人、本当はすごい実力を兼ね備えているのかもしれない。
なんて事を考えていると、屈託の無い先輩の笑顔に見つめられている事に気がついて、私はなんだか気恥ずかしくなった。
「い、いえ!あの…結局この子怪我させてしまったわけですし…せ、先輩がいなかったらどうなっていたか…私こそありがとうございます!」
「トモミちゃんは優しいね」
おだてでもなく、おべっかでもなく、本音でそんな事言われたら益々顔が赤くなってしまうじゃない!
恥ずかしさをごまかすように、私は先輩の腕の中の猿に手を伸ばした。
「さっきはごめんね、怪我させちゃっ…てぇえ!」
おもいっきり噛まれた。
「こらっ!暴れ…いでぇええ!」
「キャー先輩!このっ!指はなしなさいってば!」

コキュ

何…今の音…
「と、ともみちゃん…なんか骨逝ったっぽい…」
「だめー!離せこらー!!」



指が切断される前に何とか小猿と先輩を引き離した私たちは、母猿の猛攻に合い、結局苦労して集めた山菜は山へ還元されることになった。
泣く泣く帰るなり私はユキちゃんたちから大目玉、先輩も委員長達に詰られてた。
不運のせいにはしたくなかったけど、こればっかりはさすがに私でもへこたれそうだった。
ああ…










…………………………
またもトモミちゃんとの組み合わせ。
ドジな兄としっかり者の妹が好きです。
いやこの二人接点ないけど。
そして今回はいつにも増して日本語が危うい。がっかりだ。せめてモニタ見ながら文字打て。
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