忍たまテキスト2
□祈願
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「今日も精が出るねぇ」
「へへっ!毎度!」
もう夕暮れか。
秋になると日が暮れるのも早いな。
今日はバイトもこれくらいにして我が家に帰るとするか。
あーぁ、疲れた…っと。
帰り道、夏のお祭りの時に先生と一緒に行った神社の前を通りかかった。
いつもだったら通り過ぎてくところだけど…
祭りのあの日から何か気になってばかりいたのでふらりと寄ってみた。
別にお賽銭なんかしないよ。
もったいないし。
…あ、小銭みっけ。
だいぶ古びたお金だなあ。
手洗い場で軽く汚れを落として…
…。
…。
…。
ちゃりん。
…もったいない気がしたけど、これだけ大事なもんくれてやるんだからおれの願いちゃんと聞き入れてくれよ、神様。
手を合わせて静かにお祈りする。
どうか
どうか昨日見た夢のような事は絶対にありませんように
俺の大事な家を、先生をとらないでください!
あそこしか…あそこしかおれのいられる場所はないんです!
まだ家にいられるんなら、おれたくさんバイトするしたくさん勉強もするよ!
だから…
だから…
おねがいです!おれを追い出さないでください神様…!!
手を強く握りすぎてできた爪跡が痛かった。
こんだけ祈ったんだから大丈夫だよな。
お賽銭もあげたし、今日もバイト頑張ったし。
家に帰ったら先生孝行しなきゃ。
ずっといられるように。
見守っててくれよ、神様。
「きり丸」
「何?先生」
「お前、いつでもここの家を出て行っていいんだからな」
「………え」
「いいんだぞ、出て行っても」
「何、で…お、おれ別に出て行くつもりなんか…」
「俺は、待ってるからな」
「せんせ…っ!なんでそんな事言うんだよ!おれやだよ!」
「やだよ!!」
「もう行くとこなんかないんだよ!」
「また独りに戻るのやだよ!」
「せんせぇ!せんせえ!!」
もう、二度と、あんな本当に起こりそうな夢、みませんように。
……………………………
一昔前ならきりちゃんは一人でも大丈夫!と思ってたろうけど、もうだめだろうなと。一度あたたかいもの、心地よいものに触れたら依存してしまうだろうな、と。
依存を極限に嫌う自分ですが、依存を知らずして独立は無理だという某先生の言葉がたまに頭をかすめます。
ってかある程度きりちゃんが大きくなったらきっと土井先生も「でてっていいからな」って言いそうな気がする。