忍たまテキスト1

□長所
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「学園きっての不運の申し子だが、なかなかの強運だな。見直した」
「…馬鹿にしてるだろ」
夕日が差し込んでくる保健室にて。
6年の合同野外演習にて崖に転落して川に流された伊作は小平太に泳いで助けてもらい、長次に応急処置してもらい、食満に学園まで運んでもらい、そして今、仙蔵に介護してもらっている。
岩に体を強打したというのに打撲程度で済んだのは確かに強運といわざるを得ない。
「文次郎に悪い事したな。先生に絞られてるかな…」
「あれの心配は無用だ。その為に隊を率いてるのだからな」

伊作は差し入れのりんごを手に取った。

「長次が一番だろう」
「何が?」
「忍者としての総合的な資質」
「ああ、場数踏んでるものね」

仙蔵が伊作の手に収まっているりんごを取り上げた。

「やはり小平太か」
「何が?」
「自然への順応性と闘争本能」
「一ヶ月は山で暮らせそうだよ。あいつは。熊と戦っても勝てそうな気がする」

手元にある包丁でりんごの皮をするする剥いていく。

「食満かな」
「何が?」
「戦闘に於ける身のこなし方」
「うん。武器の使い方は然ることながら古武術で右に出る者はいないよ」

伊作は綺麗に繋がっているりんごの皮で遊ぶ。

「文次郎かもな」
「何が?」
「味方の士気の維持増進」
「伊達に毎日ギンギンしてないよね。結構勇気づけられたよ」

丸く切ったりんごを等分していく。

「…仙蔵もすごかったね」
「当たり前だ」
「そうだね。もう一人でやっていけるんじゃないかな」
「いずれそうするつもりだ」

伊作は、僕は?と言いかけたが。

「もが」
「なかなか面白かったぞ。今日の合同演習」

仙蔵にりんごを一切口の中に押し込まれた。

「全部食え。また来る」

仙蔵にとても綺麗な笑顔を向けられ、伊作はうっかりりんごと一緒に言葉を飲み込んでしまった。



結局、仙蔵から一番肝心な事を聞けなかった。
夕暮れの一人残された部屋で、しゃり…と、りんごを齧る音が何とも寂しかった。




「仙蔵、伊作は」
「ああ。問題ない。意外と丈夫にできているからな」
「それならいい」
「でもさ、いくら任務中とはいえ襲われてる鳥を助けて崖に転落なんて…」
「まあそう言うな。あれのいいところはそこなのだから」
「…なーに気味悪い笑顔浮かべてんだよ。人が怪我したっつーのに」
「お前には分かるまい」







……………………
いさっくんのよさって結局そこだと思う。
せんぞに限らず皆わかってんだけどね。
つくづく忍者向いてない…
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