忍たまテキスト1

□神社
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お名残祭りの季節がやってきた。
過ぎ行く夏の名残を惜しんで秋の匂いがほのかに漂うこの時期に、祭りは毎年行われる。
ご近所も屋台だ神輿だの大忙しだ。
きり丸は私の許可を待たずにさっさとアイスキャンディーのバイトに出かけてしまった。
大きな目をきらきら…、否、ぎらぎらさせながら。
きり丸くらいの年代の子ならば普通は客として参加するところなのだが。
私は私で、ここ最近仕事が忙しくてご近所と疎遠になっていたので、改めて交流を深めるべく大家さんの出店の手伝いをする事にした。

夕方頃、提灯が一斉に光を宿し、大勢の人で賑わっていた。
風に乗ってとうもろこしが焼ける香ばしい匂いが漂って来た
こちらでは飴がこげる匂いが。

ぐう…

「半助、こっちはだいぶ落ち着いたからそろそろ祭りを楽しんできてはどうかね」
私の腹の音に笑いながら大家さんがお駄賃にとりんご飴をくれた。
私の顔は手に持った飴のように真っ赤だったと思う。


大通りを神輿が威勢良く練り歩いていた。
わっしょいのかけ声と、力強い太鼓の振動と、甲高い笛の音が気持ちを高ぶらせる。
より一層神輿が激しく練を続け、更に大きな人集りができ、私はたまらず大通りから離れ裏路地に逃げ込んだ。
こんな中できり丸は商売なんかできるのだろうか。
まさか、神輿につぶされてやしないだろうか。
人ごみに紛れて誘拐されてやしないだろうか。
心配が胃痛を呼び、私はその場に踞った。
重症だな、と涙目になりながら顔をあげると、きり丸らしき子供が裏路地の、更に入り組んだところにある神社へ消えていくのがぼんやりと視界に映った。
「…きり丸?」


後を追いかけてみると、子供は二の鳥居の前で何かを探しているように地面に這いつくばっていた。
暗くてよく見えないが。
「小銭ー」
さも嬉しそうなの声が暗闇に響いた。
間違いない、きり丸だ。
私は脱力した。
神社を徘徊してまで銭が欲しいのかお前は!
一度どついてやろうと近づくと、きり丸は頻りに辺りをきょろきょろ見回し、手水舎へ駆けていった。
拾った小銭と手を洗い、

ちりん

賽銭箱に丁寧に銭を入れた。
だが、きり丸は拝まずに、神社のご神体である鏡ををじっと見つめたまま動かない。
一体何を見ているのだろう。
その向こうに何があるのだろう。
小さな背中からは何も読み取れなかった。


しばらく経っても動こうとしないきり丸に痺れを切らして、
「きり丸」
「うわぁっ!」
なるべく驚かせないように優しく声をかけたつもりだったが、きり丸は激しく狼狽した。
まるで、禁じられた場所へ立ち入ってしまったところを発見されてしまったかのように。

今にも泣きそうな顔をしていた。

私は直感的に「今は何も聞くべきではない」と悟った。

普段と変わらぬ態度でりんご飴を差し出す。
「探したぞ。ほら」
真っ赤な飴をじっと見つめると
「べ、別にここで小銭探してたりなんかしてないよ」
といつもの調子でその場を取り繕った。
「ほぉー、神様の前でそんな大それたことを…」
「神様だってこんな祭りの夜くらいは許してくれるって!…あ」
「やっぱり小銭探してたのかー!」
「ごめんなさぁい!」
先ほどの、あの怯えた表情はどこへいったのか、いつの間にかいつも通りのきり丸がそこに居た。

本当に、嘘が上手な子だと思った。
きり丸のその態度が私の心を悲しくさせた。
ああ、まだこの子と私との間には隔たりがあるのだ、と。


いつもそこに踏み込むべきか、躊躇ってしまう。


「せんせー、飴ありがと!」
「それはよかった。おっと、帰る前に一拝しないとな」
私は手短に拝礼を済ませ、振り返るときり丸が俯いていた。
「…どうした?」
「…人間ってさ、死んだら地獄へいっちゃうの?」
「地獄って…悪い事した人は地獄へ行くとは聞いているが…」

「どんなことしたら地獄へいけるのかな」

「…」

そんな

泣きそうな顔で。

『地獄へ行きたい』と。


何故望む?
お前は本当はそんなところ行きたくないんだろう?


言いかけたが、やめた。
答えの代わりに私の本心だけ告げた。


「お前が俺の大事な教え子である以上、地獄へなんか行かせないよ、きり丸」
笑顔できり丸の手を握ると、神社を後にした。
今はこのままでいい。
お前の中でどうしても抱えきれなくなったら、全力で当たってこい。
私は全部受け止めるよ。
親として、兄弟として、無二の親友として…教師として。




手を引かれていたきり丸が、俯きながら大粒の涙を零していた事を半助は知らない。









……………………………
あれ?こんな話じゃないよ。
何でこんな…あれ?
困った…主旨かわってる…
とりあえず…今度出すオフのさわり部分ってことで…そのうちきりちゃん爆発させたりしたいと思います。
爆発できるのは子供のうちだけです。
大きくなってからでは取り返しがつかないからね。
大昔の子供ってストレスなかったのかな。
ってか話が違うくて私がストレスだっつの。

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