忍たまテキスト1

□銀龍
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ドオォォォォおおおン
ガラガラガラ…


ドオォォォぉおおお
ガアァァァォォォオオオおおおぉぉぅゥウウウウ



突然の夕立。
最悪。
野外授業の最中、何時ものこいつのの不運のせいで俺らは道を踏み外し、伊作は足を捻挫。
崖という程の高さではないが、二年生が登れる距離ではない。
先生が助けにきてくれるのを待ったが、畳み掛けるような土砂降りに俺は伊作をおぶって駆け出した。
どこか雨宿りできる場所…ないかな…。
周りは何もない原っぱ。
目を凝らすと遠くにでかい大木が見えた。
「あの木まで走るぞ!しっかり掴まれよ!」
「うん!」
声はかろうじて元気だが、抱えた右足が異様な熱を帯びている。

折れてたらどうしよう…

不安を振り切るように駆け出した。
容赦なく叩きつける雨。
あまりの激しさから視界が白く湯気立つように見える。
暫くしないうちに目に雨が溜まり前がよくみえなくなった。
ふと、がっちり掴まっていた伊作の腕が離れた。
頭に何か被せられた。
後方からの、小さい手に広げられた頭巾が雨を遮った。
「前見える?」
「ああ!ありがとな!」
しかしそれもつかの間の凌ぎでしかなく、頭巾はすぐに水の重みで進行の妨げになった。
視界は再び白く覆われた。
伊作は邪魔になった頭巾を握り、しっかり俺の肩口にしがみついた。


大分走ったはずなのに まだ木が見えない。

既に目を開けているのも辛いほど水が顔を打ち付けてくる。


…まさか…木…通りすぎたんじゃ…


不安が脳裏を過る。


真っ直ぐ走っているつもりが、いつの間にか逸れてしまったのだろうか。

こんな前が全く見えない状態で探すなど無理だ。
しかも、バケツをひっくり返したような雨量に体力を奪われてしまった。
最早気力だけで走っていた。


「大丈夫!そのまま真っ直ぐ!」

突然、伊作が雨をかき消すほどの声で叫んだ。
さっきまでの、怪我をした時の弱々しい伊作とは別人の声だった。

まるで 雷のような。



何かに突き動かされたかのように、全力で走った。


その時俺は、伊作が俺の心を読んだ言葉に気が付かなかった。
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