忍たまテキスト1

□生徒
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「なあきり丸」
きり丸が俺の家に来てちょうど一ヶ月が経った日のこと。
俺は夕飯時にきり丸に話しかけた。
「何ですか?」
「家の中でも丁寧語じゃ寛げないだろう。せめてここではもう少し碎けた付き合いをしないか?」
「碎けた…って言いますと?」
「普段使っている言葉遣いで話してもいいって事だ」
お互いそろそろ打ち解けてきた頃だし、気兼ねない付き合いをしたいと思った俺は「名案だろう?」ときり丸に同意を求めた。
だが、きり丸は予想に反して眉間に皺を寄せて唸った。
「…お気遣い嬉しいですけど、ボクと土井先生はやっぱり生徒と先生ですから今のままがいいと思います」
当然賛成してくれるものと思っていたばかりに、俺はがっかりするのと同時に一抹の寂しさを覚えた。
ああ、まだ心を開いてくれないのか、と。
確かに俺達の関係は教師と生徒以外の何者でもない。
だが、俺の中にはこの子とはもっと深い付き合いができると確信があった。
気持ちを共有できると確信があった。
「無理にとはいわない。気が向いたらでいいから考えてみてくれ」
「…はい。すいません」
それきり、きり丸とはその話には触れなかった。



そして数ヶ月後
「せんせー!また洗濯物たまってるよーこれどうすんのさー!」
「あー悪い、適当に洗っておいてくれ」
「もー!オレは先生の母ちゃんじゃないんだからね!」

今では大変息の合う漫才コンビになりつつある。





……………………
5月の新刊はこの二人が仲良くなるまでの数ヶ月間を書きました。
10年以上前からずっと書きたかった話をようやく形にすることができで嬉しいです。
 

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