仙子ちゃんと伊作子ちゃん話其の2

□カラオケいこー
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「いさっちゃーん、カラオケいこ!」
「いいねえ!いこいこ!」
帰宅後、わいわい盛り上がる二人。
いいぞ…善法寺が食いついてきた。
昼飯時にコッペパンで小平太を買収したのだが、カラオケとは考えたな。
…いや、あいつ多分何も考えてない。
ちなみに今日の俺、食満留三郎の目標としては

『善法寺と名前で呼び合う仲になる』

だ。
小平太と善法寺ほど打ち解けなくてもいいがせめて名前で呼び合う間柄になる。
この間怒らせてしまってから口きいてないし、これは仲直りのチャンスでもある。
よし、やるぞ俺。
「他にも誰か誘おうとめー!」
一息で言うな…これじゃまるで謀ったみたいだろうが。
まあいい、善法寺が気付かなければ。
当の善法寺は格別嫌そうな顔をしていない。寧ろ笑顔だ。
もう怒ってないようだ。
「なんだ?」
「カラオケいくぞ!」
「いいぜ」
よしよし、自然な流れだ。
と思いきや
「あ、仙子も混ぜていい?今日部活ないかもしれないし」
ぐ…!やはりあいつも誘うのか…。
そっちももう仲直りしたのか?
仙子ーと立花に声をかけるあいつの背中を恨めしく見る。
部活で行けなくなっちまえ!と念を送ってみた。
善法寺が笑顔で話しかけても立花は相変わらず無表情のままだ。
よし、そのまま断れ!
「いいけど…カラオケなんて行ったことない」
なら来るな部活行け!!
俺にとってははた迷惑な話だ。
「聞くだけでも大丈夫だよ。こぺ歌上手いし、食満くんもバンドのボーカルやってるらしいからきっと楽しいよ」
…何故お前がそれを知ってるんだ善法寺。
と思った事をうっかり口に出したら善法寺が
「クラスのみんなが言ってたよ。私も聴いてみたかったんだ」
と笑顔を向けた。
…善法寺が俺に興味を示してくれた…。
俺はもう、それだけで嬉しくて舞い上がっていた。
顔は冷静を保ちつつ喜びを噛み締めた。
「…それなら私も行こうかな…」
ついでに立花まで興味を示してしまった。
別にお前は興味持たなくていい。
くそ…困ったな。
保護者付きでは善法寺のそばにいることさえ難しい。
立花は小平太に任せるか。
「こへい…」
「せんちゃんも行くのかー!それじゃあ文次郎も誘わなきゃな!」
「はああ!!?」
悲鳴の主は俺と立花。
小平太…何であのゴリラを連れていくんだ!
「小平太!何故あの猿人類を連れていく必要がある!」
立花の、俺の思考を読み取ったかの如くの発言に小平太は目を丸くした。
「だって文次郎はせんちゃんがもがり」
善法寺が慌てて小平太の口にげんこつを押し込んだ。
あれじゃまるであいつが犬扱いだ、小平犬だ。
「か、カラオケは大人数のほうが楽しいよね!あ、ちょーさん!一緒にカラオケいかない?!」
善法寺と仲良しのちょーさんこと長次が巻き添えを食らった。
哀れ長次。
首を小刻みに横に振り否定の意を示す。
俺はお前が歌を嫌いな事を知っているからあまり無理に誘えな
「ちょーさんいくってー!」
んなこと言ってねえよ善法寺!
テンパって長次無視するな!
あいつの助け船になろうと口を開こうとしたところで小平太が
「うし!俺が鍛え上げてやる!いけいけどんどーん!」
なんて言うもんだから、あいつは強制的に連行されるはめになった。

このままでは小平太と善法寺の巻き込み方式でクラス全員とカラオケいくはめになりそうなので、俺は小平太を引っ張り学校を出た。
善法寺と立花はお互いに微妙な距離を保ったまま後をついてくる。
泣きそうな長次を引き連れながら。
…よし、今度こそやるぞ俺!



決意新たに俺達は店にたどり着いた。
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