忍たまテキスト4

□絵描
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「わたしと遊ぶ者この指とーまれ!」
「はーい!」
小平太が人差し指を突き出すと伊作が指を握った。
「ようし!いさっくんと遊ぶぞー!他にはいないか?」
「お前ら…六年にもなってこの指とまれはないだろ…」
食満が盛大に呆れた。
「童心忘るるべからずだよ留三郎」
「初心忘るるべからずだよな伊作。童心に返りすぎて頭まで退化させんな」
「おお!初心だったか!」
「お前は素でボケんな小平太」
童心二人にいささか疲れてきた食満の鼻穴を突如小平太の人差し指が襲いかかった。
「んぐぉ!!!」
「よし!とめさブーもとまった!」
どうやら『続、この指とまれ』の最中だったらしい。
絶対指に止まらないであろう食満を強制的に指に止まらせたとはいえ、鼻穴に突っ込むのはいささか拷問に近いしいかんせん間抜けである。
「わーい、三人で遊ぼう遊ぼう。あ、ブーが鼻血だ!」
伊作はさらりと食満の呼び方をショートカットした。
だが大絶賛鼻血中の食満は、まさに「ブー」である。
「小平太てんめぇ!!」
「怒らない怒らない。一休み一休み」
「一休さんネタなんて今の若い連中知るか!つーか遊びたければ普通に誘え!」
「怒ると鼻血が余計出るよ」
「無様だなアヒル委員!」
突然横から聞こえてくる会計委員長の声。
声の主を凶悪な顔で睨みつけるアヒル委員。
「てんめこの…」
「うっわお前こっち向くなギャハハハハハ!!!!」
どんなに凄みを効かせた眼力でも、鼻に詰め物をしていては間抜けなことこの上ない。
「無様だなあとめさぶー」
「お前が原因だろいけどん野郎!」
加害者が部外者のような立ち振る舞いでいるもんだからお食満さんの血圧はさらに悪化していく一方だ。
詰め物も真っ赤に染まっていく。
「ブー!もう怒らないで!」
「お前の言動も怒らせてる要因だと思うが」
「あ、仙蔵」
文次郎に隠れて見えなかった仙蔵がひょっこりと顔を出す。
「…仙ちゃんなんで隠れてるんだ?」
「小平太の奴が何かやらかしそうなので文次郎をけしかけて様子を見ようと」
「んだと仙蔵てめえ!お前が前へ出ろ!」
「文次郎の癖に生意気な」
その台詞はかの暴君の決め台詞だ、と伊作は思った。
ちなみにこのような自分を中心に世界が回っている精神をかの暴君の名前を拝借して『ジャイアニズム』と言う(同義語:『ジャイズム』『タケシイズム』。反対語『クリスティズム』)
「そうだぞ、もんじのくせに生意気だぞ!」
仙蔵を上回る生粋の暴君がここにいた。
「生意気ついでに遊べ」
「何でお前と遊ばなきゃならねえんだ!」
「じゃあ僕と遊ぼう」
「だから何でお前らと!!!」
文次郎、伊作に気をとられてしまったのが迂闊だった。
「このゆびとーーーまれ!!!」
背後に回った小平太が盛大に且つ壮絶に文次郎の尻穴に人差し指を突き刺した。
「ぎゃあああああああ!!!!」
御丁寧に忍び装束をおろしての劇的な浣腸である。
この室町の世に褌がなかったら今頃文次郎は夜空のお☆様になっていたところであった。
「褌に救われたな文次郎」
尻を押さえながらふんぞり返っている文次郎を伊作は「保健委員として黙っていられない!でもどうやって介護していいのかわからない!」と困惑していた。
「皆素直にいさっくんのように指にとまればこんな悲しい目に合わずにすんだのに」
ちら、と視線を仙蔵に向ける小平太。
次なる獲物を見つけたようだ。
「…私も人差し指に止まるから頼む、その汚いものを立て続けに貫いた指だけは勘弁してくれ」
食満の鼻穴、文次郎の尻穴に突っ込んだ右人差し指は確かに殺傷能力は高い、というかばっちい。
小平太はばっちい人差し指を忍び装束の裾で拭うと「はい」と仙蔵に差し出した。
「…伊作、消毒してやってくれ」
「うん」
「だめだ!仙ちゃんはこの人差し指にとまらないともっと酷い目にあわせるぞ!」
「何?!」
二人を酷い目にあわせたって自覚あるんじゃんこへ、と伊作は心の中で暴君を責め立てた。
ちなみに先ほどから静かな食満は鼻の詰め物を取り替えている最中であって決して忘れられているわけではない。
二、三回ほど取り替えたが未だに止まる気配がない。
遠巻きにみていた伊作は不憫でならなかった。
そして隣では未だにばっちい人差し指を突き立てながら仙蔵ににじるよる小平太と、冷や汗をかきながらじりじりあとずさる仙蔵。
「ところでこへ、何の遊びするの?もう昼休み終わっちゃうよ」
「それじゃあ残り時間は仙ちゃんを追いかけて遊ぼう」
嬉しそうに言う小平太の目はギンギンに猟奇的である。
「ふざけるな!誰がそんな遊び楽しいと思うか!」
「私が楽しい!」
僕は楽しくないなあ、と伊作はがっかり肩を落とした。
「もそ」
「あ、長次。今小平太と遊ぶところだったんだけど、小平太が仙蔵苛めに熱中しちゃってつまんないんだ」
「もそ」
「え?お絵描き?」
長次の両手には紙と筆があった。
「もそ」
「面白そう、僕も長次とお絵描きするよ」
「何?!いさっくん、私を裏切るのか?!」
楽しそうに話に花咲かせていた二人を暴君は許さなかった。
「裏切ってないよ。だって小平太があんまり仙蔵と楽しそうに遊んでるから」
「お前には楽しそうに見えたかこの惨劇が」
仙蔵が青筋を立てながら伊作を睨みつけた。
「ああごめん、じゃあ仙蔵も僕たちとお絵描きしようよ」
小平太は首をもげそうなほど横に振りまくった。
「だめだだめだ!皆わたしと遊ぶんだ!このゆびとーまれ!」
「もそ」
ばっちい人差し指に触れたのは長次だった。
「…長次…その指…」
「もそ…」
「知ってて犠牲になったというのか。大人だな、お前は」
ジャストナウ伊作と仙蔵の目には長次が大人びたダンディズムに見えた。
「ちぇー、しょうがないなあ。長次も仲間にいれてやるよ」
「よかったね長次」
「助かったよ長次」
「ってお前ら俺をものの見事に忘れてるだろ」
振り返れば食満がいた。
詰め物を諦めた為、鼻血が垂れ流しの状態である。
「ブー、大丈夫?」
「お前俺の事嫌いだろう」
伊作の徒名は食満を逆撫でした。
ああそういえば伊作のネーミングセンスは最悪だったな、と仙蔵は心底どうでもいい思い事を出した。
「とめさブーも戻ったし、さっそく皆で遊ぶぞー!」

カーーーーン


乾いた鐘の音が学園内に響き渡る。

「…終わっちゃったね昼休み」
「まだだ!まだ終わっちゃいない!戦いはこれからだ!」
「小平太、どこかのダーティーヒーローの決め台詞を借用するな(by石川賢とダイナミックプロ)」
はああああ、とため息をつく六年生(文次郎除く)
「結局何がしたかったんだ小平太」
「皆とバレーがしたかったんだ…」
がっくり肩をおとす小平太がちょっと不憫に思えた伊作は
「それじゃあ放課後みんなで遊ぼうよ。僕も頑張って委員の仕事早く終わらせるから」
「いさっくん…」
(とめどなく鼻血が滴り落ちる)食満が呆れながら
「お前どこまでお人好しなんだ…ったく、俺も鼻血がとまったら付き合ってやってもいいぞ」
「ブー!」
「だからブーはやめろ!」
いつの間に食満の徒名は定着したのだろう、と仙蔵は思いながら諦め半分
「どうせ拒否したらまた小平太に追い回されるのだろう?なら私も付き合う」
「仙ちゃん!」
「あーだからその人差し指で触るな!」
本当はお絵描きがしたかった長次は、ちょっと残念そうに笑った。
それを見た小平太は
「あ、やっぱりお絵描きにしよう」
とあっさり寝返った。
「どこまで暴君なんだ…」
文次郎が芋虫の如く這いずりながら輪の中に入った。
「けがはないかもんじ」
「おおありだバカタレ!!!しばらく立てんぞどうしてくれる!!」
「じゃあますますバレーは無理だね。皆でお絵描きしよう」
「お絵描きって…俺ら六年…」
「いいじゃないか。小平太のバレーに付き合わされたらまず夜通し確定だ」
オールナイトバレーに苦しめられる皆を伊作は想像した。
地獄絵図っぽくなった。
「よーし!じゃあこれにて解散!いけいけどんどーん!」
いいだしっぺは早々に教室へ戻ってしまった。
「ええ!酷!」
「伊作!俺達も早く教室へ戻るぞ!」
「うん!皆また後で!」
猛ダッシュで教室へ向かうは組と満面の笑みの長次。
おえかきがよほど嬉しいらしい。
「…せん…」
「…」
無情にも何も見なかったそぶりで走り去る仙蔵。
「うわこの野郎!!覚えてやがれ!!」


グランドに残された文次郎がお得意の匍匐前進で教室へたどり着いたのは授業終了後であった。










………………………
今日は珍しく何も話が思いつかなかったので無意識にすべてを託してみたらなんとまあカオスな話ができあがりました。
しかも何も意味を成さないという。
そして続きそうですが。
続くんだ…。

文次郎が痔になった時どうなるんだとハラハラしました。
書いてる本人が何ぬかす。
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