長編小説

□融点ドライアイス
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『まことっ、肉まん食べて帰ろ!』

身軽で、運動神経抜群だった千秋は、いつも自転車をこぐのが早くて。置いてかれないように、私はいつも全力で自転車をこいだ。

『ちあきっ、何味にするの?』

吐き出した吐息は白くて、瞬く間に暗闇に溶け込んで消えてしまう。

『おれがピザまん!まことはカレーな!そんで、半分こ!』

暗くて、千秋の表情はわからなかったけど、吐き出される白い吐息が、熱を示していた。

学習塾の帰り道。居残り組の私たちは、冬の季節になると、決まっていつも、コンビニで肉まんを買って公園で食べて帰った。

肌を刺す空気が好きで、わざとマフラーをせずに帰ろうとする私に、『つけとけ』って、マフラーをぐるぐる巻きにしてくれたのは、いつも千秋だった。




「真琴っ」

まず私を呼んだその声が、千秋じゃないことに驚いて、そうだ、今は体育の授業中だった、と思い出した。
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