長編小説

□Stay with me
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“鉄の女”

影でそう囁かれているのは、知っていた。何事にも妥協することが大嫌いな私は、少々完璧主義すぎるらしい。

『さすが鉄の女』

…今更へこんだりしないけど。こういった“事故”は今まで何度もあったし。その度、聞いていないフリを通してきた。

自分が他の社員からどう思われているかなんて、百も承知だ。特に、この春入社したばかりの新入社員たちは、私が話し掛けるだけで怯えているのが、うかがい知れる。きっと、飲み会か何かで、先輩から何か吹き込まれたんだろう。

≪瀬野涼子には気をつけろ≫ってか?

馬鹿馬鹿しい。所詮、負け犬の遠吠えだ。

“鉄の女”なかなかいい響きじゃないか。
私は軽く鼻で笑うと、鏡の中の自分に微笑んで化粧室を後にした。
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