短編小説

□ピンクの輝石
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淡い桃色、うるさいショッキングピンク、上品なサーモンピンク。
可愛いと、純粋に思う。私には届かない色だけど。
これらはすべて、彼女のための色。


「歩美、はい、これ」

真っ黒な猫っ毛が、ふわりと揺れる。振り向いた歩美の、透き通るような白い肌は相変わらず綺麗で。

「わぁ、可愛い!ありがとう!」

くりっとした大きな瞳が、キラキラと瞬く。
私の手に握られた、飾りつきの可愛らしいヘアゴムを受け取ると、歩美は嬉しそうに自らの手首にはめた。桃色の淡い花が、彼女の手首に咲く。
桃色の、淡い桃色の、あれはきっと原石。

「可愛い。やっぱり歩美は、ピンク似合うね」

そう言ってニッコリと微笑むと、歩美は花のように笑った。

「春花は私の好みを熟知してるなぁ。幼稚園からの付き合いはダテじゃないね!」

「ピンクは歩美の色だから、ね」

手首のそれに触れる指先は、白く長い。私は思わず、自分の手を後ろ手に隠した。彼女と並べるには、余りにも滑稽なその手を握り締める。まるい男爪が、少しだけ手に食い込む。

「これでオソロだね!」

目の前に掲げられた腕に従って、私もその筋張った逞しい腕を掲げる。並べると、歩美の白さが際立った。
私の手首にはめられた黒い花が、ゆらゆらと揺れる。花に散りばめられたスパンコールは、怪しい光を放つ。真っ黒な、花。

私にピッタリ。心の中で、自嘲。
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