短編小説
□絶対不可侵領域
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「ミ・ド・リちゃーん!」
あー…キタ。喧しいのが一匹。
私が聞こえよがしに「はぁ、」ため息を吐くと「あ〜ダメダメ!ため息吐くと幸せが逃げちゃうぞっ!」とニッコリ。そのまま私の前の席を陣取る。
騒がしい教室の一角。面白そうに見てくる、周囲の人の目、目、目!あぁ、もう鬱陶しい!
「ねぇミドリちゃーん」
面倒くさい。無視。
毎日毎日、休み時間の度に飽きもせず訪れる彼のその図太い神経には、怒りを通り越して呆れを覚える。
「あれ、ミドリちゃんフキゲンー?」
五月蠅い。誰のせいで不機嫌か考えろ。
「こらミドリ!お得意の黙秘か!」
「黙秘じゃなくて、無視」
「ちゃんと聞いてんじゃん!」
あぁ、どうしてこんな面倒くさい奴に目をつけられたのか。この不毛なやり取りに、終わりはくるのか。