短編小説
□hate you
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「付き合うことになったの」
――さらさらと
雪解けのように忘れられることを
期待している――
「え、まじで」
自分でも笑っちゃうくらい、素っ頓狂な声が出た。
つい数分前までは、くだらない冗談や、馬鹿な話をして笑っていたのに。
隣に座る亜紀は、真正面を向いたまま真剣な表情を浮かべていた。
車内には数えるほどしか人がおらず、あたしと亜紀以外、話し声は聞こえなかった。
「なに、誰。俊くん?あ、タカとか?」
あたしは極めて明るく、いつものように振舞った。大切な友達の、喜ばしい報告じゃないか。
何も恐れる必要はないのに。あたしは何かに、怯えていた。
亜紀の伏せた睫毛が瞬きの度、揺れる。すっぴんだけど。キレイだ、と思う。亜紀は最近、ほんとに綺麗になった。
「優くん」
嫌な予感はもうずっと、ずっと前からしていて。