短編小説

□導火線
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一年近くくすぶり続けていた導火線の火が、燃え尽きることなく、消えてしまった日。
それでも空は私の代わりに泣いちゃくれなくて、道行く人は皆いつも通り、地球は止まりもしなかった。

世界は昨日までと何も変わらない。

当たり前と言えば、それまでのことなんだろう。
どこにでもいるようなただの女子高生が、たかが好きな男一人にフラれたからといって、それだけで天変地異が起こるほど、世界は狂っちゃいないのだから。

けれど、失恋直後の私には照りつける太陽光が決して優しくはなかったし、いつもと変わりない田舎町特有のゆったりとした空気の中に身を晒していると、その煩わしさから叫びだしたいような衝動に駆られた。

フラれる覚悟だって、ちゃんとあった。
彼がちっとも私のことを見てくれていないことだって、薄々わかっていたのに。
だからこそ、どんな結果になったって静かに笑って受け止めよう。みっともないから、彼の前では泣かないで、一人でそっと涙を流そう。そんな心の広い女になろうって。
そんなことまで、考えていたのに。
一世一代の告白の返事を聞かされた今、私は――。

現実を受け入れることなどできず、そのせいか一滴だって涙を流すこともできず、ただ延々続く長い一本道に、自転車を走らせていた。
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