リクエスト小説

□ピンクの憂鬱
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「島崎くんと別れた」

歩美が発した言葉を飲み込むのに、数秒だが時間がかかった。

「え、うそ‥」

夏休み最後の夜。歩美が家に突然やってきたかと思えば、別れの報告。こんな報告だったとは予想だにしていなかった私は、宿題をしていた手をとめた。数学の鬼のような夏休み課題が、まだ半分ほど残っていたが、それどころではなくなった。

「さっき公園で、バイバイしてきたの」

歩美は、まるいクッションに顔を埋めたまま、消え入りそうな声で呟いた。

「なんで、」

別れちゃったの?と聞きかけて、失敗したと思った。こういうときは、黙って抱きしめてあげるべきだ。無理やり聞き出すものじゃない。

私が歩みの華奢で薄い肩に、そっと手をかけると「男ってさ、」歩美はゆっくりと顔をあげた。まだ、泣いていない。

「男って性欲の塊だと思わない?」

真剣な顔をしてとんでもないことを言い出す歩美に、私は目を真ん丸くさせた。
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