短編小説
□ハーフタイム・ティーン
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恋をすると、人は皆、何かしら変わるのだと聞く――。
「えーっ!すごいじゃん!」
甲高い、女子特有の悲鳴に近い声がした。
それを聞くや否や、室内のあちらこちらでなされていた喋り声がぱたりと止んで、声のした方へと視線が一気に集中する。
「なになにっ?」
「どうしたの!?」
「なんの話ですか!?」
汗と埃と、制汗スプレーの臭い。
それらが漂う部室は、狭く、暑苦しい。
一刻も早く出ようと着替えを急いでいた私は、お喋りするのも忘れて、汗で湿った体操服をすべて脱ぎ捨て、スカートのファスナーを上げ終えたところだった。
「なにー?何がすごいんですか!?」
好奇心に駆られる野次馬に混ざって、私も一際大きな声を出して問いかける。
部活終わりといえど、ぐったりとしている者など誰一人いない。寧ろ、体中を駆け巡るアドレナリンのおかげで、有り余る力のやり場に困っているくらいだった。
クールダウンしても、頭の中までクールダウンはできない。いつだかそう言ったら、馬鹿だって笑われた。
確か、西森。あいつだったと思う。
「あぁ、も〜わかった!」
――ぎゃあぎゃあと騒ぎたてる私たちに、半ば呆れながらも、堪忍したように口を開いたのは、
「言うから!静かにして!本当にあんた達うるさいわ!」
皆の視線の中心にいた二年生の先輩二人のうちの一人だった。