版権小説

□繋がり
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貴方という毒に抵抗しようと必死に抗う。
けれど本能という波は理性の壁を少しずつ浸食し、脳内に充満していく。
決して愛す事を許されない相手なのに。






繋がり





―コンコン。

「カイン様。お薬をお持ちしました。」

マリー様の夕食が終わり一息ついた頃、食欲がないと部屋に戻られたカイン様に胃薬と白湯をお持ちした。
独断ではあるが、寝付きが良くなるように人肌に温めたパール入りのホットミルクも。
カイン様の返事はないが扉を開ける。

「失礼します。」

ベットの横にあるサイドボードにトレイを降ろすと、気付かれたのか、瞼を開けられた。

「リフ…。」

「ご気分はいかがですか?
薬を持ってきました。
ミルクも。」

背を枕代わりの大きなクッションに任せる態勢へと変えるカイン様。

「もちろんパール入りだろうな?」

「えぇ、もちろん。
服薬されるのでしたらミルクを先に飲まれた方が良いのですか…」

「薬はいらない。ミルクは飲む。」

私はミルクの入ったカップを渡し様子を伺った。
頬が若干だが高揚している…
それに加え、瞳の水分量が高い…風邪かもしれない。ふとカイン様のカップに宛がう唇に目がいく。
白い筋が首筋を伝っていくのが見えた。

「カイン様。零されていますよ。」

ふっと笑い、右手でその白い筋を拭う。
するとカイン様が右手首をじっと見つめているのに気がついた。
―私の傷だ。

「…申し訳ありません。なるべく見えないように配慮していたのですが。」

そう謝罪するとカイン様がカップを口元から外し、手首に顔を近づけたと思った瞬間、傷を一度ぺろっと舐めた。

「カイン様…?」

次に右手首にキスを落とし、目だけをこちらに向けた。
カイン様の長い睫毛から覗く金の交じった緑の瞳が妖しさを漂わせていた。

「リフ…夢をみた。」

そう言いながら愛おしそうに私の手首に頬擦りをする。

「…どんな夢です?」

カイン様は時々、出会った頃に戻られたかのように甘える。
いつもの気丈さからは微塵も感じられないほど甘え、肌との接触を求められる。
今日もいつもの"甘え"だと思っていた。
親に甘えることができなかった子供の多少行き過ぎた愛情表現。
しかし、私の中の"何か"が反応していた。

「…リフ、お前は俺のものだろう?」

再び舌を這わしはじめたカイン様。
普通の男性なら勘違いし、事に及ぶには十分すぎる程の雰囲気。
しかし私たちはそんな俗物的な行為だけでは計り知れない関係がある。

「…カイン様。私は貴方のために生きているんです。」

すると傷の辺りから痛みがあがる。

「…っ!!!」

カイン様の歯が食い込む痛みだった。
白い歯と形の良い唇から少量の赤い液体が生まれる。

「…リフ、じゃあこの血も俺のもの?」

何とも言い難い表情をされる。

「私がどこかに行ってしまう夢でも?」

笑顔を向ける。

「……ねぇ、リフ。肉体的な繋がりが欲しい。」

そう言うとカイン様は体を起こし、ベットの上で四つん這いになられた。
シャツ一枚。肌の白さが際立つ。なんと妖艶な。
すると私のズボンの留め具を触り始める。

「カイン様!?」

驚き、手で防ごうとすると

「お前は俺のものなんだろ?俺にリフを…頂戴…」

そう言うと現わになったモノに舌を這わす。

「…っく!!」

思わず声があがる。
カイン様の舌の動きに翻弄される。

「カ…!!カイン様…!!!
そのような事をなさらずとも私は…!!!!」

限界が近い。
するとカイン様の動きが早まる。

「カイン様…!!!!」

ゴクン。

達してしまった私の精液を飲み干す。
何も考えられない頭でカイン様を見ていると、飲み干せなかった白濁液が伝っていた。
反射的に伝う液体を拭う。
するとカイン様がニッと口の端をもたげた。

「…リフ、これはパール入りのミルクじゃないよ。」

強引にカイン様の後頭部をわし掴みにし、噛み付くようなキスをする。

「…んっ…。」

舌を絡めて角度を返え、吐息が途中我慢出来ずに漏れる。
カイン様も舌を絡ませ、お互いの咥内から溢れ出す唾液。

「…っリフ…んっ…。」

十分に味わった後、唇を話すと銀の筋が伝った。
先ほどまでの積極的なカイン様はそこにはなく、快楽に身を任せる"人"がいた。
主人と忠実なる執事ではなく、愛を語らうただの"人間"同士。
もう道徳観なんていらない。

「カイン様…私をすべて受け止めて下さる覚悟はお有りですか?」

カイン様をベットに横たえ、馬乗りになり、白濁液が伝った首筋を舐める。

「…んっ。…はぁ…お前こそあるの?」

カイン様と鼻と鼻が触るか触らないかというくらいの位置で、目の前の愛しい"人"を見つめ、言葉を送るのではなく、ただ笑顔を送った。
すると、カイン様が私に抱き着き、縋り付くように耳元で囁いた。


「…お前を自由になんてさせてやらない。」


カイン様の言葉を噛み締めるように脳内に言葉を染み込ませ、改めて決心したように応えた。



「仰せのままに…。」




貴方という妖艶たる毒に囚われた私。
俗物的な繋がりによって、全身に充満した毒。
貴方と共にこの生命を.....






→アトガキという名の懺悔。
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