版権小説

□匂い
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ねぇ、夏目。
今度はかくれんぼして、夕焼け見て、
夜は星を一緒に見よう!
それでそれで!!
寝る時はお母さんのお墓の横で
三人並んで川の字作るの。
あー、楽しみだな!
夏目に早く会いたい!
声が聞きたい!
触りたい!
夏目のあの、優しいお日様みたいな匂いに包まれたい。




匂い



お母さん!
夏目が約束通り来てくれるんだ!
一緒にかくれんぼして、
一緒に夕焼け見て、
一緒に星を見るの!
ご飯は僕が捕ってきた魚に木の実!
喜んでくれるかなぁ?
笑ってくれるかなぁ?
頭撫でてくれるかなぁ?
それでね!
寝る時はお母さんの横で三人で寝るんだよ!
そうしたらお母さんも寂しくないでしょ?


ねぇ、お母さん。
夏目はね、凄く優しいの。
それでね!
光に当たって髪がキラってしてすごく綺麗なの!
頭を撫でてくれるといい匂いがするんだよ。
なんか懐かしい匂い!
あとね、抱きしめてくれたんだよ。
手も繋いでもらったの!
なんかね、ほっとした。
お母さんに抱きしめてもらったみたいに。
暖かかった。
…また手繋いでくれるかなぁ?
また、抱きしめてくれるかなぁ?
また笑ってくれるかなぁ?

ねぇ、お母さん。
僕早く大きくなりたいんだ。
そしたら夏目の役に立てるから。
僕から会いに行けるしね!
それでね、今度は僕が夏目を抱きしめてあげるんだ。
不安が全部無くなっちゃうくらいに!


−ビュッ


あっ!風で帽子が!!
あぁー!待って!
急いで追い掛ける。
すると光をバックにする人影が。

「…また無くすぞ?」

そこにはキラっと光る綺麗な綺麗な僕の大好きな人。

…なつめ?

「元気にしてた?」

にこっと笑顔を僕に向けてくれた。

夏目だぁー!

思わず叫びながら走って抱き着いた。

「うわっ!相変わらずだなぁ〜。」

夏目は僕の頭を撫でてくれる。
あ、ほらこの匂い。

夏目!待ってたよ!
僕少し大きくなったでしょ!?

夏目は僕を降ろして

「…そうかな?」

と笑って答えてくれた。
それから帽子を僕に被せて
「さて、何をしようか?」

と腰に手をあてた。
僕は帽子のツバの両側を持って言った。

ねぇ、夏目。
手繋いでもいい?

夏目はにっこり笑って

「いいよ。」

って手を差し延べてくれた。


…それからかくれんぼして、夕焼けを見て、
僕が作った夕食を食べて、星をみた。
もちろん寝る時は川の字で!
僕は夏目にくっついて寝たんだけど
お母さんが死んじゃってから
初めてじゃないかってくらいぐっすり眠れた。
夏目のあの匂いに包まれながら、
あったかい
あったかい
体温を感じて眠った。


夏目。
不安を消してくれてありがとう。
手を繋いでくれてありがとう。
抱きしめてくれてありがとう。
今は小さくて無理だけど
もっと大きくなって
夏目の不安を消せるくらい大人になって
今度は僕が抱きしめてあげるからね。
それまで待っててね。




次の日、夏目は帰った。
けどまた会いに来てくれる!
一人じゃないって思えたから寂しくなんてないよ!

−お母さんと僕は、この森で生きていく。





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