版権小説

□片翼
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オレとお前は二人で一人。
いや、一人って表現はおかしいな。
片翼と片翼を合わせて一対の黒いハネ。


片翼


生まれた時からずっと一緒やった。
お前が怪我したらすぐ分かったしその逆もしかり。
オレが姫様に惚れてることもお前にはお見通しやったな。
オレがバカなことをやると叱ってくれたし、分かってくれた。
時々姉貴ぶってうざったい時もあったけど、やっぱりオレらは二人で一人。
いつも一緒にいるのが当たり前だったから、お前と離れた時何かが足りない感じがした。
なぁ、寂しいのは、手持ち無沙汰なのはオレだけ?
もし同じことを感じていたなら、この先本当に何回謝っても謝り足りない。

ごめんな、ノイズ。
一人じゃお互い不完全なイヴル。
二人でいたから完全体やった。
お前は悲しむかもしれへんど、オレは本望やねん。
コレがお前じゃなくてよかった…。
肉体は無くなるけどオレはお前のそばにずっといるよ。
うざいって嫌がってもな。
肉体はないけどオレに会いたくなったら鏡を覗き込めばいい。
オレとお前はよく似てんねんから。

あぁ目が霞んでいく…
脳裏に浮かぶのはお前ばかり。
姫様より多いとかどこまでもうざいな…フフ。

お前の幸せを切に願うよ。
敵討ちなんて考えたらあかんで。
姫様が泣いちまう。
お前はオレの分も姫様にお遣いしなあかんねん。
オレの分も生きて、色んな世界を見てくれ。
救世主なら、きっと見せてくれるから。
ごめん、もう限界や。
先に行くな…。
待ってるとは言わんで。
お前は生きなきゃあかんねんから。


「…ボイス?」


うわ、幻聴まで聞こえよったわ…ハハ。
あれ、涙が暖かいな。
お前も泣いてくれてんの?
こういう時、繋がってるって不便やな…


…今まで、ホンマにありがとうな。





−「ボイス…」
そう囁くノイズの頬には一筋の涙が伝った。





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