版権小説

□白昼夢
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大きな両開きの窓から差し込む光りに照らされ
カーテンを優しく揺らす風が心地良く頬を掠める
今までの己の愚行を洗い流してくれているかのように…

「風と一緒に、お前の匂いがする。」



白昼夢


無我夢中になって探したあちらへの扉
お前と引き換えに自分が望んだことなのに
やっとの思いで探し出した『手掛かり』
しかし
それも追求すればするほどに
お前に遠ざかっていく
分かっていたはずなのに
扉を開くと決めた時から、分かっていたはずなのに…
俺にとって
扉を見つけるという行為が生きる意味を成し
お前にまた会えるという希望も芽生えた
それだけで俺は生きていけた
お前は俺の全てだから
お前のいない世界で生きていくなんて考えられない


ごめんな、アル
もう疲れたよ
一縷の希望も無くしちまったんだ
なぁ、俺はこの先何を糧に生きていったらいい?
お前とは心の中でしか会えないのか?
背、伸びただろうな
俺も成長したんだぜ?
強く握り直した拳に冷たい感触が伝わった

お前に会いたいよ。
声を聞きたいよ。
記憶から消えてしまいそうな
お前の笑顔がもう一度見たい。
お前のいない世界なんて…なくなればいい



…今日は天気がいいな。
こんな日はお前と組み手でもやりてぇな。



「兄さん?」



アルの声が聞こえた気がする
あぁ、窓の向こうにいるのか。
この窓があちらへの扉だったなんて気がつかなかった。
還れるんだ。

「今行くよ、アル。」




―「エドワードさん?」
エドがいるはずの部屋には誰もおらず
開かれた窓からの風でカーテンレースが揺れていた








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