版権小説

□相愛
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誰かを愛して、
自分も愛されて…
それってすっげー幸せなことじゃん?










相愛















「お前って、意地らしいほどに全力で人を愛するよな。」

いつもながら体育倉庫で、吉良先輩と授業をサボり、マットレスに背中を預けて気を抜いている時にふいに掛けられた。

「へ?」

マヌケな声が出た。
相変わらず煙草を蒸しながらオレに問う。
…憎たらしいくらいかっこいい。

「ほら、お前って嘘付けないだろ?好き嫌いもはっきりしてるけど、一度好きになった人間に対して全力でぶつかってるなって思ってさ。」

思わず上半身を起こし、向かいの扉近くの跳び箱に座る先輩を見据えた。
明後日の方向に向きながら問うていた先輩が目だけこちらに向け、応えを待っているのが分かる。
何が言いたいんだ…?
いつもの意地悪…?
先輩はなんでか事あるごとにオレに難しい質問をする。
オレ頭悪いから分かんないし…
ただ、したいようにしてるだけ。
いや、愛されるために…したいことをしているだけ…。

すると、いつの間にか頭を下げていたオレの頭上に影ができた。
思わず顔をあげると、そこには肉らしいほどに整った先輩の顔があった。
思わず後ずさると、後頭部を押さえ込まれ、先輩の漆黒の瞳から目が離せなくなり、少しの間見つめ合う体勢で静止した。

授業中、誰の声も物音もしない、無音の空間の中、先輩の片手から生まれる煙だけが動をなす。

オレは身動きもとれず、一言も発することも出来ず、ただ目の前の先輩を瞳に映すだけだった。
すると後頭部を持つ手はそのままにもう片方の煙草を挟んだ手で先輩はオレの頬を撫でた。
それから人差し指が唇を摩った。
煙草の味がする。
そんなことを考えていると、先輩がこの沈黙を破り、言葉を発した。

「…刹那、俺がお前を愛しているといったら…お前も俺を愛してくれるか?」

そう言いながらオレの後頭部をグイと引き寄せ唇を重ねた。

「…んっ。」

急に深く口づけられたキスに翻弄され、息が漏れる。

「…んぁ、…はぁ…。」

力が抜け、後頭部を支える先輩の腕に体重を預ける形になり、それと同時に唇が銀の筋を引いて離れた。
そこに再度先輩が問う。

「刹那…俺を愛してくれるか…?」

してやられた。
オレはまだ思考が正常に働かない頭で、先輩の首に両腕を回し、耳元で囁いた。

「…ずっとオレはアンタが好きだったんだ。」





愛し愛されて、
なんて幸せ。







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