妖アパ
□彼は星になりました
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「龍さんはネ、星になったんだヨ」
一色さんが突飛なことを言い出すのはいつものことである。
だけど一色さんが言うと突飛なことも、ほら話ではなく事実のように聞こえてしまうんだ。
それがきっと一色さんの人徳なんだと俺は思う。
……思うんだけど、今日の彼の話はいささか胡散臭かった。
「龍さんが……星、っスか……?」
「そうだヨ。……ってどうしたの夕士クン変な顔して」
いつものように、一色さんは何を考えているのかよく分からない顔でにこっと笑った。
そんなふうに反応されると、おかしいのは一色さんではなくて自分のような気になってしまう。
それになんだか龍さんなら星になれそうだし……。
「そうっスよね……龍さんなら星にだってなれますよね」
そうだ。なんたってあの龍さんだ。
悪霊を祓ったり、式を使役したり、きっと言ってないだけで本当は異空間に跳んだりしてるはずだ。
だからだいたいのことはどうにかできるんだ……多分。
一色さんのラクガキ顔が、笑みにはじけた。
「そんなに簡単に信じちゃだめヨ夕士クン!」
「はあ?」
「いくら龍さんでも一応人間なんだから星になるなんて無理無理!」
「え?でも……」
「論理的に考えてごらん、生身の人間にまず大気圏突破なんて不可能なんだからネ。仮に異次元の穴こじ開けても、生身の人間だから真空状態じゃ龍さんでもお手上げだヨ〜」
「…………つまり」
「んー?」
上機嫌な顔の一色さんを見て俺は全てがわかったような気がした。
「……俺をからかってたってことっスか?」
「うん」
一色さんは悪びれもせず、くすくす笑った。
「だって夕士クン、龍さんのこと大好きデショ?」
「――!?!?」
いきなり核心を突かれて思わず体がのけぞった。
――待て待て待て。落ち着け俺!
【好き】にもいろんな意味があるんだから!
焦る必要なんかない!
……はずだ!うん!
「なーんてネ!」
「…………………………」
テンパる俺を見て一色さんはケタケタ笑いながら、お茶のお代わりをもらいに席を立った。
またからかわれたのか……。
俺は机に突っ伏した。
顔が熱い。
――そうか、俺が龍さん好きなの一色さんにはバレてたんだな。
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