献上

□犬は喜び庭駆け回り、猫はこたつで丸くなる
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季節は冬。
11月の末。
クリスマスまでまだ一ヶ月あるというのに、世間はもうクリスマスシーズンだ。
街には大きなツリーが建ち、イルミネーションもあちこちで輝いている。
恋人たちは寒さから手を繋ぎ、こたつに入って暖をとる。

そんな中、僕達はというと。


「妹子のアホッ!!もう知らん!!」


バシンッ
涙目で怒鳴ってくる太子の右手が僕の頬に赤い紅葉を咲かせた。
そしてそのまま逃げるように走り去っていく。

つまりは、世の中がクリスマスムードの中、僕達はというと、
大喧嘩の真っ最中であった。





≪犬は喜び庭駆け回り、猫はこたつで丸くなる≫





喧嘩の原因は極めて単純。
そして僕としては喜ぶべきこと。

太子はクリスマスが近いから、沢山出かけたいと、つまりはデートがしたいという。
僕はこんな寒い時期に外へ出かける必要も無いし、風邪をひいたらいけないので、家の中でこたつに入っていたいと言った。
両者の意見の対立。

太子が僕とデートしたいと言ってくれるのは本当に嬉しいけれど、風邪でもひいたりしたら洒落にならない。
だからずっと断り続けてたら、これだ。

太子に叩かれた頬が熱を帯びて、じんじんと痛む。
男の勲章ってやつなのか、これ。


「……容赦ねぇー…」


暫くは引きそうにない痛みと腫れに、小さく溜息が零れる。
太子って普段は幼稚でもおとなしいのに、一度癇癪を起こすとすぐに手が出るんだよな。

なんて、恋人が泣きそうな表情で走り去っていったのに、何故こんなにも僕は冷静なのだろうか。


「…まあ、やるべきことが分かってるから、だよね」


一人呟いて、太子が走っていった方へと足を進めた。
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