献上
□悪い夢はもう終わり
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嫌だ、
嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ嫌だ、
なんで、
行かないで、やめて、
そんな表情しないで、そんな目で私を見ないで、
お願いだから、
私を一人にしないで、妹子。
≪悪い夢はもう終わり≫
ええと、
これは一体どういう状況なのだろうか。
「…太子?」
「………」
真夜中に突然僕の家に来た太子は、僕の姿を見た途端ボロボロと涙を流しながら抱きついてきた。
それから離れてくれない。
いや、離れて欲しいわけじゃないけど、
ていうか抱きついてもらえるのは凄く嬉しい…って、そんなことは置いておこう。
何かあったのかと聞いても、太子は首を振るだけで何も言わない。
時折嗚咽を洩らしながら、必死に僕にしがみついている。
まずいなあ、
理性の糸が切れそうなんだけど。
「太子、大丈夫ですから、ね、僕がいますから…」
「う…っい、いぉこ…っ」
何だこの可愛いオッサン。
まずい、大いにまずい、危険だ。
この人はあれなのか、僕の理性の糸を引きちぎりたくてこういう行動に出ているのか。
僕だって若いんだから、好きな人が目の前にいたら下半身が疼くんだっつの。
理性と本能が必死に格闘していながら、いまだ泣き止まない太子の背中を摩る。
そうしたら余計涙を誘ってしまったようで、嗚咽が酷くなってきた。
ああ、どうしよう。
「いや…っな、…夢っ…見たんだ…」
「え?」
「妹子が…私から去ってく…っ夢、私のこと嫌いって…っ」
なんだ、それ。
はあ?
僕が太子を嫌うわけがないのに、僕が太子から離れていくわけがないのに、
むかつく。
たとえ太子の夢の中に出てきた僕であろうと、太子を泣かせることは許せない。
「太子、」
「っ」
両手で顔を包み込んで上を向かせれば、太子は泣きはらした紅い目で不安そうに僕を見上げてきた。
う、我慢しろ僕の下半身。
「僕が貴方を嫌うわけがありません」
「…妹子…っ」
「僕が自らの意思で貴方から離れていくなんてこと、ありえないんです。わかりましたか?」
「…っ」
コクコクと何度も何度も頷く太子。
ああ、良かった。
どうやら太子の不安を拭い去ることは出来たようだ。
で、残った問題は、
「(これ…主に下半身らへんをどうするか、だな)」
「?」
fin.