【秋伏】
□アンドロイドは××の夢を見るか 2
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バウンティハンターとは、賞金稼ぎの事だ。
バウンティハンターは利害の一致で様々な仕事を請け負う。
秋山氷杜は、暴走アンドロイド専門のバウンティハンターだった。
手に終えなくなったアンドロイドの処分や討伐の依頼がバウンティハンターの組合である青の組織を通してハンター達に知らされる。
報酬は様々だが、価値の基本は金や宝石など、どこの派閥にも通用するものに限られている。
いつの世も、財産のステータスは金よりも宝飾品だということには変わりがない。
『現時点でのアンドロイド部門最高額討伐報酬は、日本製のFSM1107、No.11、No.16、No.27、の三体です』
青の組織から支給されているタンマツを通して電子音声が再生された。
「…FSM1107?」
隣で煙草を吹かしながらそれを聞いていた弁財は眉を潜める。
「不具合のない完璧な機体って言う話だろ」
何処か小馬鹿にしたような口調だ。
それも頷ける。
アンドロイドが完璧であるなら人間とはなんだ、と秋山は常々思っていた。
弁財も同じだろう。
「確か、宗像さんの秘書もFSM1107だろ?」
「…No.03、だったか?」
秋山はタンマツに表示されている画像を見たままで応えた。
「ずいぶんと入れ込んでいるみたいだけどな…」
弁財が鼻で笑う。
アンドロイドハンターの統括でありながら、自らアンドロイドを傍に置くなど到底理解できない。
「…いつでも壊せるって言いたいんだろ?」
恐ろしい人だな、と秋山は思った。
アンドロイドハンターが一番懸念しているのが、アンドロイドに感情移入することだ。
アンドロイドを物と思うか、それとも自分と同じような人間と思うか。
「高額報酬って幾らだよ?」
「金貨500枚ってとこかな…?」
「…破格だな」
しかし、FSM1107は今までまるでこの業界に出たことのない討伐対象だ。
おいそれと手を出して返り討ちということになったら目も当てられない。
「…もう少し様子を見てもいいんじゃないか?」
秋山は慎重な意見を口にした。
弁財が苦笑する。
「相変わらず、お前は臆病だなあ」
「今まで生き延びられたのはそのお陰だと思ってるよ」
秋山は皮肉を口にした。
そこへ、タンマツから通信が入る。
宗像からだった。
「はい、秋山です」
『秋山くん、通知は確認していますね?』
先程のFSM1107の事だろう。
嫌な予感がする。
秋山と弁財は、青の組織の中でも討伐実績の高いバウンティハンターだった。
『では、今回の件、請け負ってくれますね?』
「はい?」
唐突にも程がある。
予想していた事だが、秋山は頭を抱えた。
「いえ、今回の相手はデータが余りも少なく…」
『問題はありません。【日本アンドロイド技術研究所】には連絡を入れてありますのですぐに向かってください』
ふざけるな、と言えたらどんなに楽だっただろうか。
「…わかりました」
秋山は気落ちした声でそういうと通信を切った。
隣で秋山のタンマツに耳を押し当てていた弁財がニヤリと笑う。
「流石は期待のバウンティハンターだな」
「うるさいな。俺だって断れるなら断りたかったよ…」
宗像に直接言われたら頷くしかない。
ここを追い出されてははぐれものの行き着く末路は見えている。
「仕方ない。俺も着いていってやるから」
「有り難いよ。お前が居てくれたら心強い」
「止せよ、調子が狂う…」
弁財は顔をしかめて頭をかいた。
斯くして二人は【日本アンドロイド技術研究所】に向かったのだった。
2014.04.25