【猿美】

□Get cold
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がたがたうるせぇ。

いろんな音がする。

普段はパソコンの起動音ぐらいしか聞こえないのに、台所から盛大な物音。

鍋落としただろ。

がんがん音を立てる頭痛を感じながら起き上がると、

「寝てろよ」

台所からそういう声がした。

お前なにやってんだよ。

人が風邪引いて寝込んでんのに。

ガチャガチャうるさい。

「おい、起きろ…美咲」

寝てろって言ったのに、なんだよ。

猿比古は、こたつの上に土鍋を直接置いていた。

「…新聞紙とかねーのかよ」

「新聞なんかとってねーだろ」

当たり前のように言われて納得せざるを得ない。

「段ボールは?」

痛む喉無視して言えば、

「お前の下にある」

なるほど、その通りだ。

猿比古は絆創膏だらけの指で土鍋の蓋を開けた。

なんだよ、その手は。

絆創膏だけじゃなくて、赤く染まった指先は火傷でもしたのか。

そんな指で、キーボード、叩けるのか。

「食えよ」

土鍋の中には雑炊が入っていた。

「作ったのか?」

「いや、チンして入れただけ」

外見だけ異常にこだわるのな。

「うまい?」
「わかんねー」

熱があるから、味なんかわかるかよ。

「…あ」

パイナップル入ってる。

「なんだよ、」

猿比古は不貞腐れた様な顔をしていた。

雑炊にパイナップルなんて、一生理解できないとか言ってたくせに。

「食ったら寝ろよ」

そう言う猿比古の手に貼られた絆創膏には血が滲んでいた。

包丁、パイナップル切るのに使ったのかよ。

あー、なんか鼻水出てきた。

そういやお前、看病のしかた知らねぇんだもんな。

猿比古は横向きに座ったままタンマツを弄ってる。

「…ありがとな」

「……、あってんだろ」

「は?」

「なんかあったら、呼べよ」

「……え?」

猿比古はそう言ってロフトに上がっていった。

あー、なんか、ホントお前、不器用だなと、思った。













看病とか、お前にして貰ったこと以外知らないから。




2014.04.22

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