庭球
□It's the thought that count.
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『日吉、誕生日おめでとう!』
「……」
バタンッ
「ちょちょちょちょ!閉めんなや!」
「…忍足さん、扉に顔を挟めるのやめて下さい。気色悪いです」
「ピヨ〜そないに照れんくてもええんやで〜☆」
「ピヨじゃないです日吉です。それに照れてなんかいませんよゴミたり先輩」
俺は忍足さんの顔を力一杯押した。
「そんなこと言うなや〜侑ちゃん泣いてまうでぇ☆」
忍足さんはそれに怯むことなく腕を掴んで引っ張ってきた。
「うわっ?!」
「ほらひよC〜おとなしくお祝いされちゃいなさい♪」
「何ですかお祝いされちゃいなさいって…」
「いーから早く座れって!」
向日さんに半ば無理矢理椅子に座らせられる。
どうやら逃げられないらしい。
というかあなたもですか…。
「ねぇひよC〜これあげる☆」
「あ…、ありがとうございま…」
お礼を言いかけた口が止まる。
…何でこの人は食べ物なんだ?
しかもあのキノコのお菓子かよ。
「俺のおすすめ!!」
「…はぁ」
「じゃあ今度は侑ちゃんからのプレゼントやで☆」
忍足さん…きもいから舌出してウィンクしないで下さい。
「これや!!」
「……」
忍足さんの手にはあの某携帯電話会社のキャラクター、キノコのキーホルダーがあった。
…絶対これ、携帯買った時についてきたやつだよな…。
まあ取り敢えず貰っておこう。
後でゴミ箱に行くことになるだろうが。
「次は俺様だな!!おい樺地!」
「ウス」
そう言って跡部部長が樺地に持ってこさせたのは…
「最高級の松茸だぜ!ありがたく受け取れ!!」
…いや、もう匂いで気付いてたから。
おそらくそこにいた全員がそう思っただろう。
「おい、日吉!!」
「…何ですか?」
向日さんのはあてに…
「俺からのプレゼントは俺だぜ!!」
…
「はぁ……ありがとうございます」
…できなかったようだ。
「え?!それだけかよーっ」
何でこの部活の3年はまともな人がいないんだろう…。
「なぁ、日吉」
「…宍戸さん」
「これ…俺からのプレゼント。お前何が欲しいか分からねーから、テニスで使えるリストバンドにしておいたぜ」
宍戸さん…
あなたが一番まともです。
「日吉!!俺からも。いつも世話になってるお礼」
「鳳…」
鳳が差し出したのは白いタオルだった。
何だ…鳳も案外普通のものをくれ…ん?
何でキノコの刺繍がしてあるんだ?
「俺が縫ったんだ!すぐに日吉のだってわかるだろ?」
「……」
よくあんなごつい体で作れたもんだ。
「ウス…」
「ん?」
自分の背後から発せられた声に振り向くと、樺地が花束を持っていた。
その花束に添えられたカードには、『誕生日おめでとう』の文字。
「樺地…」
不覚にも目から水が出そうになってしまった。
というか、樺地と宍戸さんしかいないのか、ましな人は。
「宍戸さ〜んvV」
「ち、ちょうたろ…抱きつくんじゃねぇよ!暑苦しいっ」
「いいじゃないっすかぁ〜vV」
「樺地〜おんぶしてー」
「……ウス」
いや…
この部活にましな人なんていなかったな…(自分以外で)
何だか頭に少し鈍い痛みが走った気がした。
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