Long novel
□天空の使者〜第三章〜ボンゴレリング
2ページ/58ページ
―ザッ、ザッ
「ハァハァ」
夜の帳が降りた生き物達が寝静まる時間、何かから急ぐように一つの静かな足音が深夜の都市部に響く。
「早く…早くこれをあの方に届けなければ」
暗闇にぼんやりと浮かぶ人影は懐から何かを取り出すとそれを大事そうにぎゅっと抱える。
「くっ、奴が追ってきたか」
だんだんと近づいてくる気配に気付いたその影は、またそれを懐にしまうと追ってから逃げる為にビルの間を縫うように駆け出した。
「もうすぐ、もうすぐ貴方の場所へ着くんだ」
2つの気配が去り、またそこは何事もなかったかのように静寂に包まれていった。
―――
―ガヤガヤ
「皆、静粛にこれから会議を始める」
ボスの言葉に今まで私語を話していた幹部達は静まる。
それを確認したボス、クリスは手元にあった書類を一通り目を通す。
ここはセイレーン・ファミリーの会議室の一つで今ここにはセイレーンの幹部とボスだけが集まっていた。中央の上座に座っていたクリスは書類に目を通し終えると、上がってきていた報告を口に出した。
「どうやら、最近ボンゴレで内密にだが大きな動きがあったようだな」
諜報員でもあるレオナールに確認をとるとレオナールは立ち上がり、報告をあげた。
「オレの調査によると、ボンゴレの独立暗殺部隊が最近、怪しい動きをしていたようで」
「ヴァリアーか」
「そ、ヴァリアーだよ。調べによると数年前の揺りかご事件と関係があるみたいなんですが、まだ詳しいことは調査中って感じです」
「揺りかご…レオ、引き続き調査を頼むよ」
「了解」
レオナールが座るのを横目で見ながら隣に座っていた綱吉はその事件のある人物を思い出す。
「綱吉、君はどう思う?」
「あぁ、今回のヴァリアーの動きは妙だな。確実に何か起きるのは間違いない。しかも、直感だがオレにとってはかなり不都合な」
己の直感が揺りかごと聞いてからずっと警鐘をならしているのだ。
しかも、揺りかご事件は…
「そうか、私達もわかり次第、君に連絡するが君も何かあったら何でもいいから連絡を頼むよ」
「わかった」
「じゃあ、次は由良報告を…」
「ハッ、私からの報告ですが…」
由良や他の幹部達の報告を聞きながら綱吉はある人物について考えていた。
(ヴァリアー…奴を目覚めさせる気か?)
今後、起きそうな事を考えて綱吉は1人ため息を吐くのだった。