捧げもの2

□スパイラル・ワールド3
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歌が、聞こえる。

誰かが歌っているのか?
優しくて温かい、どこか懐かしい歌声。

それに何故だか泣きたくなる。



・・・井上?
いや、違う。
この声は・・・まさか・・・・。







「一護!!!」


現実世界に戻された俺は、太陽が視界に入ってきて、眩しくて手で目を覆った。

波の音が聞こえる。
ここは海か?
体がやけに重いな。
誰かが上に乗ってるみたいだ。

つうか、今の声誰だ?



「起きろ!一護!いつまで寝てる気だ!!」




「・・・・ルキア?」


もう一度目を開ければ、ルキアがそこにいる。

俺、どうしてたんだっけ?
寝てたのか?
それにしては、体が濡れてて気持ち悪いな。

波が何度も俺の体にあたっていることに気付いたのは、ルキアが俺の顔を覗きこんでから5分ほど経過した頃だった。




〈スパイラル・ワールド3〉





「・・・・・体が潮水で気持ち悪い。」
「仕方ないだろ!!とにかく人がいるところまで歩くぞ!」


一護とルキアが船から落ち、織姫達と離れ離れになったことを思い出し、一護は重い体を立たせ、やっとのことで歩いている。

長時間海に流されていたせいで体力が奪われてしまった。

それにしてはルキアは元気だが。



「ここ、どこなんだよ?」
「知らん!」
「井上達は?」
「知らん!」
「俺達井上達と合流できるのか?」
「知らん!」
「オマエ、知らん知らんって・・・。」
「うるさい!静かに歩け!!」


ルキアだって不安。
だけど、死神の先輩でもあるし自分の方が長く生きてることもあって一護には弱音は吐けなかった。


「・・・・よりによって、ルキアなんかと・・・。」
「なんか言ったか?」
「別に。」



大都市エスペラントの大陸に辿り着けたのか、元の大陸に戻ってしまったのか。
それとも別の大陸に流れ着いたのか。
一護達はそれさえも分からなかった。

あの嵐、織姫は無事だったのだろうか?
自分達がいなくなったことに、泣いてないだろうか?
道中怪我をしていないだろうか?
自分が傍にいて護ってやりたいのに。



「・・・・・井上は、無事なのか?」
「恋次が傍にいる。大丈夫に決まっているだろう。」
「・・・・・石田も傍にいるんだよな。」
「今頃井上と石田は仲良く手を繋いでいるかもしれないな?」
「・・・・石田、ぶっ殺す!」
「冗談だ。いちいちヤキモチ妬くな。」
「そういうオマエは今頃恋次が井上の傍にいるって、心配になったりしないのか?」
「私は恋次を信じている。あやつなら井上を護ってくれるはずだ。」
「・・・・余裕ってわけですか。」
「貴様も少しは大人になったらどうだ?」
「なれるもんならとっくになってるっての。」
「そうだな、まだ16年しか生きておらぬ小僧に言ったところで無駄だったな。」
「小僧で悪かったな。」
「そういう青臭いところも、井上は好きだと言っているのだろう?ならいいではないか。」
「・・・・・・・。」
「まったくもって井上は奇特な人間だな。」
「うっせぇ。」
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