その他

□第二ボタン
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※一護高三、冬獅郎高一設定です
※制服は学ランです










「――黒崎一護」


名前を呼ばれ、卒業証書を受け取り、ステージから降りる。


そのステージから降りるわずかの間だけ体育館内を見ることができたのだが、それだけの時間でも彼の姿はすぐに見つけることができた。


黒髪だらけの中に一つだけ混じった銀色。


それを見て、席に戻って第二ボタンをそっと握った。










◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆










『黒崎先輩!』


式が終わり、最後のホームルームも終わり校舎を出た直後の一護にそう声がかけられた。


しかも声の感じからして1人2人ではなさそうだと振り向いてみれば、案の定そこには十数人の女子が集まっていて。


一護が振り向いたのを見て一斉に詰め寄ってこられたのには、さすがに顔がひきつった。


それでもなんとか「何だ?」と聞けば、「ボタンをください!」と返ってきた。


「…ボタン?」


『はい!!』


「別にいいけど…」


そんなに数ないぞ?という言葉は口から出る前にうわっという短い悲鳴に変わった。


なぜなら、周りを囲んでいた女子たちが一斉に一護に群がったからだ。


一護にとって幸いだったのは、ボタンの数がそれほど多くなかったことだろう。


ボタンを手に入れることができた者は嬉しそうに、できなかった者は肩を落として去っていくのを尻目に一護はふぅと息をついた。


「――一護」


そんな一護を呼ぶ声に、一護の顔がパッと輝いた。


「冬獅郎!」


近づいてきた冬獅郎は、前面のボタンどころか袖の飾りボタンまでなくなっている一護の学ランを見て、すごいなともらした。


その言葉に一護は自らの学ランを見て苦笑した。


「ああ、これか。たしかにすごいよな」


「――でも、ひどくないか?」


「へ?何が」


学ランの前面を触りながら見ていた冬獅郎が急に声のトーンを抑えてポツリと言った。


一護が何のことだかわからないでいると、冬獅郎はうつむいたままで続けた。


「あんなに大勢に囲まれて驚いたんだろうが、ボタンを全部やっちまうなんてな」


「えっ…なっ…ちがっ…!」


あれを見られていたのかと焦りながらも、冬獅郎が何を勘違いしているのかわかった一護はとっさに訂正した。


「ん?何が違うんだ?」


「ほ、ほら!これ!」


ポケットに手を入れバッと冬獅郎の前に差し出した手のひらには、ボタンが一つ、乗っていた。


「これ…?」


「……第二ボタンだよ。事前に取っておいたんだ」


その言葉にバッと顔をあげると、一護の顔は真っ赤に染まっていた。


「どうして…?」


一護は自分に向けられるそういう感情には鈍感だから、自分で思いつくことはないだろうと思った冬獅郎がそう聞くと、一護は冬獅郎の視線から逃げるように顔を背けながら答えた。


「…たつきに聞いてたんだよ。前に女子たちがこう言ってたから気をつけなって」


「そうか…。ならたつきセンパイに感謝だな」


そして一護の手の上のボタンを取り、続けた。


「そのおかげでこうして一護の心を手に入れられたんだからな」


「っ…!!」


たしかにその通りといえばその通りなのだが、冬獅郎のあからさまな言い様に一護はさらに顔を赤くした。


そして冬獅郎はそんな一護をかわいいなと思ったのだった。




<fin.>







あとがき

ナルトに比べてすごく長くなりました

しかも最初は冬獅郎が帰国子女で男前な一護を目指してたんですよね、実は

結局いつものような感じになりましたが

でも終わりはちょっと無理やりな感じに……うーん、ごめんなさい←

こちらもお礼になってないようなお礼ですが、3周年&3万打ありがとうございました!

そして今年卒業された皆様、おめでとうございます!

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