その他

□一滴残らずに…
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真夜中、賑やかな表通りを離れて裏道へ入り込んで来た人間の首筋に顔を埋め、血を啜る。


年寄りよりは若者、若者よりは子供の方がその血は甘く美味しい。


だが、幼い子供など真夜中に歩いているはずもなく、たいていの獲物は若い男女。


その日も彼は暗闇に身をひそめ不運な獲物が通りかかるのを待っていた。


(…来た!)


足音からして、獲物はおそらく1人。


年も比較的若そうだ。


電信柱と電信柱の間の光の届かない暗闇、獲物がそこを通りかかった直後、背後に降り立つ。


そのまま首筋に噛みつけば、程なくして獲物は意識を失うだろう。


そうして、いつものように首筋に噛みつこうと口を開き――


(避けられた!?)


一瞬のうちに獲物は少し前方に跳んでいた。


「へぇー、君だね?ここ最近並森の風紀を乱しているのは」


懐中電灯で照らされ、とっさに顔を隠す。


もし表での知り合いなら知られるとまずいことになるから。


「背格好から見てまだ子供かな…?…まぁ、僕には関係ないけどね。並森の風紀を乱すものは僕が咬み殺す」


ジャキッと構えたのはトンファー、使い古されたようなそれと先ほどまでの言動で、彼の正体がつかめた。


「雲雀…恭弥…!」


「おや、僕の名前を知っていたんだ。それなら君はこの辺りに住んでいるのかな?」


「……」


「答えなくてもいいよ。君を倒して聞けばいいんだから」


そう言うと雲雀は唐突にトンファーを振るってきた。


捕食者はそれを避け続ける。


雲雀がトンファーを右に振るえば左に、上方に振るえば下方に。


一進一退の攻防がしばらく続いた。


「反撃は、してこないのかい?」


「……」


「相変わらず黙ったまま…まぁいい。これで、終わりだよ!」



雲雀の持つトンファーから現れた仕掛け鉤が顔を隠していたマントを引き裂いた。


そこから現れたのは、茶色の髪と目をした少年。


「君は…沢田、綱吉…?」


マントの下から現れた予想外の人物に一瞬隙が生まれた。


その一瞬のうちに綱吉は懐に潜り込み首筋に噛みついた。


「なっ…っ……!」


たちまちのうちに体が力を失っていく。


カシャンッ…とトンファーの落ちる音がしたが、気にしている暇はなかった。


「―…ごちそうさま」


霞んでいく意識の中、そんな声を聞いたような気がした。


体が地面につく前に、雲雀は意識を失っていた。


「…顔を見られたのは予想外だったけど、血の味も予想外だったな。今日はこれで勘弁してあげるけど……次に会ったら…」


その時は、一滴残さずに吸い尽くしてあげよう





<fin.>









あとがき

皆さま分かっていたと思いますが、吸血鬼はツナでした!

相手は雲雀さんになりました

その他の人たちは、何人かは吸血鬼として出演予定です

相変わらずお題と微妙に会っているかどうか…な仕上がりです(苦笑)

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