『ネズミにとって1番大切なものって何?』
「さぁ。」
スープを作るネズミ。素っ気ない返事をされる。
『僕はね…』
「聞いてない。」
言葉を遮られる。なんだよ、聞く耳なしか。
「それ以上喋ったらこのスープ、頭にかけるからな。」
冷たい声で想像するだけでも熱いことを口にする。
にしても、喋ることを封じられたら聞きたいことだって聞けない。
「チチッ」
『お前のご主人様、ひどいよ。』
「チッ?」
まん丸の目をぱちくりさせる。言ってること分かってるのかな?
『僕の1番大切なものはネズミの存在なんだよ?』
「チチッ…チッ」
何て言ってるんだろ…。
『ネズミがいなくなったら困るのに。』
「どうせ生きていくのが大変だからだろ?」
『違う!そういう意味じゃ…』
一体どんな顔でスープを作ってるんだろ…。
「出来た。」
そう言うと手際よくスープを皿に分けるネズミ。
『僕はネズミが大切だ!生きてくためじゃなくて…。』
上手い言葉が見つからない。
「じゃあ、助言しとく。」
ネズミの動きが止まり、僕を不敵にそしてどこか甘い表情で見てくる。
「そんなに大事なら縛っておくんだな。おれはあんたと違って身軽で賢いんだぜ。」
『じゃあ僕は縛らずにいつだって手を繋いでる。』
ネズミはふと目を落として僕から目を反らす。
あれ?照れてる?何か耳が赤いような…
「振り払って逃げる。」
『じゃあ僕は追いかける。』
参ったな…。
彼はそう言って僕にキスした。